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茜色の空に
第9章 静寂の海
腰がほぼ立たず回復しない私の代わりに、私のキッチンで樹さんが料理をしてくれた。

「これからはたまに来て、倫子に料理つくってあげるよ。
こう見えて家事は好きだし得意なんだよね。」

手際よく、ベーコンエッグとトーストと簡単なサラダを樹さんは作ってくれた。

「それじゃ私の立場がなくなってしまいますが・・・」

私が不服そうに作ってくれたものを食べると、樹さんは優しく笑って言った。

「それじゃ、今度倫子もうちにきて料理つくってよ。
俺、倫子のつくった料理食べたいな。
でも、料理つくってる最中にイタズラして襲うの我慢する自身はないけど。」

さりげなく、爽やかにセクハラ発言をするので、一線を越えると印象が変わるな・・・と心の中で思ったり。

それから、樹さんと過ごす日々はとても穏やかだった。

税理士事務所の仕事も、なかなか辛い時もあるし決算の時期はとても帰りが遅くなったりするけれど、充実していた。

忙しい日々と樹さんの暖かい温もりに、私の凍り付いた心は癒されていくように思えた。

でも茜色の夕陽をみるたびに、胸の奥がズキズキと痛む。

そんな時だった。

久しぶりに高校時代の同級生の圭子から連絡がきたのは。

『お久しぶりです。
連絡くれて嬉しいです!
いったいどうしましたか?』

私は久々の友人からの電話で、一瞬日々の不安な気持ちから解放される。

『久しぶり、倫子!
こっちには帰ってこないのー?
倫子に会えなくてさみしいよー!』

圭子は相変わらずな調子で、元気に私に話しかけてくる。
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