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茜色の空に
第9章 静寂の海
「ごめんね。
水瀬くんに、ここで会った事は誰にも言うなって言われたの。」

圭子が話してくれた。

私たちが20歳の成人式を終えた年の2月、彼が突然地元の市役所にあらわれたそうだ。

もう2年前の話だった。

「私も永吉も、彼の連絡先は聞けなかった。
でも関東で、美容師の仕事しながら生活してるから心配するなって笑いながら言ってた。
帽子で金髪を隠して伊達メガネかけてたけど、あの身長と青い瞳は隠し切れてなかったからすぐ気づいたよ。
何度も倫子に言おうと思ったけど、倫子が前を向いてるときにこんな事いえなかった。
ごめんね、倫子・・・本当に私は倫子に幸せになって欲しいから・・・」

圭子を泣かせてしまったことに、私は私のせいでいろんな人に苦しみを与えてる事に気づく。

「ごめんなさい。
圭子を責めているわけではないのです。
ちゃんと生きている事さえ解れば、よかったのですよ。
本当に・・・」

私はそう話して電話を切る。

誰とも話したくなくて、樹さんにも連絡を取らず着替えもせず、天井を見上げていた。

心の中が闇に支配されていく・・・なにも聞こえないし何も生まれない静寂の海の中にいるようだ。

前を向こうとすると、いつもあなたとの思い出から逃れられなくなる。
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