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茜色の空に
第10章 失われた時を求めて
「相変わらず、水瀬は特定の彼女作らないよねぇ~
やっぱり遊んでたいの?」

閉店の手伝いをしながら、同僚の片桐晃太に聞かれた。

まぁ、こんだけ色々と遊んでたら噂にもなるし何より俺は目立つし、まぁ当然の結果だ。

「あ?
あー、作る気がねぇわけじゃなくてそう思える女がいないだけ。
高校生の時以来、彼女いねぇから。」

掃除をしながら、そう答えた。

片桐は俺と同い年の美容師で、いつもアッシュブロンドに染めた髪をオールバックになでつけている。

お調子者でトークもうまく、指名数も高いいわば俺のライバル的な同僚だ。

しかし年より若く見える見た目の割りには、実はこいつは結婚している。

来月には結婚式があり、俺も呼ばれていて正直楽しみではある。

「そういや結婚式来月だよな?
やっぱマリッジブルーとかになるわけ?」

俺がそう聞くと、片桐は幸せそうに笑う。

「どちらかというと、今でも彼女と出会えてこれが夢じゃないかとか思っちゃうよぉ~
職業もまるで違うし、俺なんかたかが雇われ美容師なわけでしょ?
彼女がよく結婚してくれたとは思うんだぁ~」

そう幸せそうに話す片桐を、俺は心底うらやましく思った。

自分が心から愛するひとと一緒にいること。

手が届きそうなのに俺には届かないものだから、余計に奴の幸せそうな笑顔が眩しかった。
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