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第10章 失われた時を求めて

しばらくして、片桐が更に浮かれた表情で戻ってきて言った。

「百合がこれからここに来るって！」

さっき俺にはあわせたくねぇっていったじゃねぇかよ！

と、心の中で片桐に悪態をつきながらとりあえず片桐の嫁を待つ。

片桐の嫁は、一言でいうとギャルだった。

「あ、これが噂の水瀬さん？
確かに超イケメン！正統派のイケメン！
しかし本当にこれ地毛で青い目もカラコンじゃないんだぁ！
なんかウケるぅ！」

ギャルはきゃぁきゃぁいいながら俺に一気に話しかけて、俺は若干気が遠くなる･･･というか引く。

片桐の好みが俺にはまったっくもって理解できなかった。

「どうも、水瀬海渡です･･･よろしく･･･」

俺が若干ひきつった笑顔でそういうと、片桐の嫁のギャル･･･百合は少し不思議そうな顔をして言った。

「ミナセ･･･カイト･･･？なんかどっかで聞いたような名前･･･いや、きっと気のせいかな。」

俺とこのギャルに過去に接点があったとも思えない。

彼女は東京出身だし、きっと地元でも会っていないはずだ･･･俺はこのことをあまり気にも留めていなかった。

「百合との出会いは一緒の仕事をしたことなんだよねぇ～！」

片桐が嬉しそうな顔で、全力でのろける。

どうやら、彼女のアパレルの会社で撮影があったときにヘアメイクを依頼されたのが片桐だった。

まだ新人の彼女は、どんどんモデルを魅力的に変えていく、片桐の真剣な仕事ぶりに一目惚れしたらしい。

まぁつまりは、職場恋愛って事だな。

ちなみに、片桐も彼女も俺と同い年の26歳だ。