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茜色の空に
第10章 失われた時を求めて
「まぁ、その子の気持ちは解らないでもないなぁ・・・
俺も傍にいてくれても、心を許しかけても結局は引き戻されちまう。
きっとその子も過去の思い出にとらわれてるのかもなぁ・・・」

俺が苦笑しながらそう言うと、百合は不思議そうな顔をして言った。

「水瀬さんも、なにかトラウマがあって本気で誰かを好きになれないって事?」

俺は一瞬、彼女に全てを話してしまおうか悩んだ。

でも誰に話してもきっと、そのうち時間が解決してくれるってみんな慰める。

もうそんな言葉は聞き飽きた・・・そう思うと誤魔化すしかなかった。

「そんなんじゃないよ。
俺は単に女癖が悪いただのクズなだけだって。」

そう笑うと、百合がとても悲しそうに言った。

「違うよ、あなたは全てに嘘をついて生きてる。
私が知ってるあの子と、同じ目をしてるよ・・・
結婚式の時に、彼女と話してみて。
あなたなら、あの子をきっと理解できると思うんだな。」

そして彼女は、少し寂しそうに笑って片桐を必死に起こす。

「もぉっ!晃太、起きなかったら離婚だからねぇー!」

彼女が、そういいながら片桐をめちゃくちゃ気持ち悪くなりそうなくらい揺すぶっているのを見て、俺は微笑んだ。

俺も、ずっと倫子と一緒にいたらこんな関係になれたんだろうか?

倫子と付き合って、いろんな思い出をつくってそのうち結婚して、ふたりで子供を育てて・・・

夢見ても今更しょうがないのは解っていたけれど、少しだけ夢を見ていたかった。
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