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茜色の空に
第12章 想い出の跡地
俺も挨拶をし、促されソファーに倫子と座る。

彼女の父親は物静かで、年の割には若く見えた。

「君のことは君たちが高校生の頃に一度だけ見かけた事があるよ。
最初は倫子の彼氏にしては随分とやんちゃな感じだったな、と思ったよ。
あれからずっと続いているなんて、なんか青春って感じでうらやましいね。」

そう言って倫子の父親は、優しい親の笑顔を見せた。

思えば倫子の父親をみたのは、いまの奥さんとの不倫現場だったと思い出す。

いま思い出すと、マジで気まずい。

まぁ、もう10年も前の事だから時効だろうけど・・・

「いえ、実は数年前に一度離ればなれになったんで、再会したのはついこの間なんです。
東京で友人の結婚式で偶然出会って・・・それからお付き合いさせていただくようになりました。
いまでも出会えたのは不思議なんですよね、本当に。」

俺はそう彼女の父親に話した。

ふと目線をあげると、倫子と目があった。

彼女が優しく微笑んで言う。

「私にとって、とても大切な人です。
本当に。」

その倫子の言葉を聞いて、彼女の父親が寂しそうに笑った。

「子供は・・・あっと言う間に大人になってしまうんだな。
いや、私は倫子の事をあまり大切にしてこなかったから、こんな事を言う資格もないんだけどね・・・
君なら、倫子を大切に思ってくれている君なら、きっと倫子に寄り添ってくれるだろう。
倫子を、よろしく頼むよ。」

彼はそう言って微笑む。

その顔は、とても優しくて寂しそうで・・・でも俺は知らないけれどこれが父親ってもんなんだろうな・・・そう思った。
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