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茜色の空に
第12章 想い出の跡地
「おまえの親父さんって、すごく優しい人なんだな。」

倫子の実家を後にし俺がそう言うと、倫子が少し寂しそうに笑って言う。

「優しいのは、きっと蘭さんと結婚してからでしょう。
ひたすら昔は、笑わないし無口だし母との喧嘩で怒鳴る事もしばしばで・・・
そう考えると、父にとって母は結婚すべき相手ではなかったし、私も生まれてくるべき人間でもなかったのかもしれません。」

そういう倫子が消えてしまいそうで、反射的に倫子を抱き寄せた。

「か・・・海渡?」

倫子が戸惑った顔をして、俺を見て言う。

抱き寄せたときに、ふわっと倫子の香りがする。

「いや、俺は倫子に会えて幸せだからおまえの両親が出会ってくれて感謝しなくちゃいけねぇなって思うだけ。
俺だって、父親がどいつかわからねぇし母親とはもう二度と解りあえる事もねぇ・・・
だけど、本当に俺はおまえと会えてよかったと思ってるぜ・・・」

俺は倫子を抱きしめながら、そう言った。

彼女は、少しだけ泣きそうな顔をしていた。

ずっと愛されてなかった子供、俺も倫子も。

「例え世界中の誰もがおまえの事が嫌いになっても、俺だけはおまえの味方だぜ。」

そう言って、倫子の小さな額に自分の額をくっつける。

人前で何やってるんだ、とか思ったけどそれでも倫子が少しでも笑ってくれるだけで、俺はとても幸せになるんだ。
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