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茜色の空に
第12章 想い出の跡地
「ほら、信じていれば夢は叶う、だろ?」

俺たちを見てニヤニヤとからかうように笑いながら、その人は言った。

親方は既に50歳の大台に乗ったらしいが、少しシワができたくらいであんまり変わっていなかった。

「10年前は本当にありがとうございました。
親方がいなかったら、俺はいまごろ下手したら生きてないかもしれねぇし……」

俺がそういうと、親方は俺の頭をポンポンと軽く叩きながら言う。

「まぁ、天涯孤独のお前にとって離れてても俺がオヤジみたいなもんだ。
そうなると倫子ちゃんは息子の嫁だな!」

それを聞き、下をむいて倫子は頬を赤らめる。

倫子にとっては意識しないでこういう行動をとるんだろうが、その度に俺は倫子をその場で犯したくなる。

俺たちはあれから、親方を訪ねて彼の家に来ていた。

驚いたことにあれから結婚したらしく、どうやら子供もいるらしい。

あいにく残念ながら、外出中だった。

そこで俺は、親方にあることを尋ねる。

「弟は…月光は組にいるんですか?」

俺は膝の上に置いた手を強く握って言う。

親方は顔の前で組んだ手の上に、顎を乗せていった。

「いまとなっちゃ、あいつは白井組の若頭だ。
まぁ普通に大学生やってるらしいが。
悪いことはいわねぇ…月光には近付くな…」

親方は冷たい瞳でそう言った。


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