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茜色の空に
第12章 想い出の跡地
俺と対照的な真っ黒なストレートの髪に、長い睫毛に大きな黒い瞳の女顔。
その姿は記憶にある、10歳の月光が大人になった姿だった。
二人がいるテーブルに近づき、俺は固まる。
そして、月光と思われる男が傍らの俺をにらみつけようとしたが、その目が驚きで見開かれていく。
「兄ちゃん・・・」
確かに俺をそう呼んだ・・・ただ水かけられてなぜかびしょ濡れの姿で。
「何よ!あたしの事無視すんじゃないわよ!」
女が月光につかみかかろうとしたその時だった。
月光が瞬時に女の腕を掴み、冷たい目でいい放つ。
「それ以上、なんかしてみろ。
本気でおまえ命惜しくないの?
だいたい、おまえなんかに本気になるわけねぇだろババア。
さっさと俺の前から消えろ。」
その冷たい瞳に、俺でさえぞっとした。
女は青い顔をして震え、やがて早歩きで店を出て行く。
月光は髪の毛が濡れ、水滴をぽたぽたと垂らしながら深いため息をついて言った。
「帰ってきたんだ、この町に。
久しぶりだね、兄ちゃん。
偶然、こんな所を見られるなんて思わなかったよ。」
とりあえず濡れているのでハンカチを差し出す。
そして後ろを振り返ると、倫子が驚いた顔で立っていた。
「月光・・・くん?」
倫子が月光にそう呼びかけると、月光は更に驚いた顔をした。
「もしかして・・・倫子ちゃん?
兄ちゃんってまだ倫子ちゃんと続いてるの?
俺、今日一年分驚いたかもしれないよ。」
そう言って笑う月光の顔には、やっぱりあの頃の無邪気な笑顔は残っていないのを感じた。
その姿は記憶にある、10歳の月光が大人になった姿だった。
二人がいるテーブルに近づき、俺は固まる。
そして、月光と思われる男が傍らの俺をにらみつけようとしたが、その目が驚きで見開かれていく。
「兄ちゃん・・・」
確かに俺をそう呼んだ・・・ただ水かけられてなぜかびしょ濡れの姿で。
「何よ!あたしの事無視すんじゃないわよ!」
女が月光につかみかかろうとしたその時だった。
月光が瞬時に女の腕を掴み、冷たい目でいい放つ。
「それ以上、なんかしてみろ。
本気でおまえ命惜しくないの?
だいたい、おまえなんかに本気になるわけねぇだろババア。
さっさと俺の前から消えろ。」
その冷たい瞳に、俺でさえぞっとした。
女は青い顔をして震え、やがて早歩きで店を出て行く。
月光は髪の毛が濡れ、水滴をぽたぽたと垂らしながら深いため息をついて言った。
「帰ってきたんだ、この町に。
久しぶりだね、兄ちゃん。
偶然、こんな所を見られるなんて思わなかったよ。」
とりあえず濡れているのでハンカチを差し出す。
そして後ろを振り返ると、倫子が驚いた顔で立っていた。
「月光・・・くん?」
倫子が月光にそう呼びかけると、月光は更に驚いた顔をした。
「もしかして・・・倫子ちゃん?
兄ちゃんってまだ倫子ちゃんと続いてるの?
俺、今日一年分驚いたかもしれないよ。」
そう言って笑う月光の顔には、やっぱりあの頃の無邪気な笑顔は残っていないのを感じた。