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茜色の空に
第3章 桜草を君に
ふたりで土手にきてみると、ちょうど夕暮れに近づくいい時間帯だった。

俺は勇気を出して、彼女の俺よりかなり小さめの手をそっと取る。

「ここまでくれば、手ぇつなぐくらいいいだろ?」

俺がそういうと彼女は顔を真っ赤にして頷いた。

あったかくて小さな手。

身長差20センチもあるせいか、彼女は歩くのが遅い。

あわせてゆっくり土手を歩く。

「なぁ、なんでいつもこの場所きたがるんだ?」

俺が聞くと彼女は言った。

「確かに他の場所にいってみたいと思いますし、もっっとオシャレな場所とかお金のかかる場所にいったほうが普通のデートのようでいいとは思うんですが…何よりもあなたのご家庭はお母様おひとりですし、あまり無理をさせるわけには参りません。わたくしも、お金を出してどこかにいくよりも、季節の花をみたり、風を感じたり、夕陽をみたりが一番落ち着くのです。」

そう言って彼女は優しく微笑む。

彼女はいつだってとても優しい。

思わず恥ずかしくなって俺は夕日に視線をうつして言う。

「ばーか、遠慮してないでたまにはわがままいえよ。」

あー、キスしてぇ…

俺は自分のなかの理性を保つのが精一杯で情けなくなる。

茜色に染まる空をみながら、手を繋いで日がくれるまで俺たちはゆっくりと歩いていた。
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