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茜色の空に
第3章 桜草を君に
「そうやって水瀬くんは全ての痛みに耐えてきたのですね……」

そう言って倫子が俺の握りしめた右手をそっと握って言った。

「私たちはまだ恵まれていなくても、親の庇護下にいる無力な子供です。
私たちの力では、あなたに危害を及ぼすひとを追い出すことも訴えることも難しいと思います。
私たちができることは、いまの環境に負けないことと、信頼できる人をつくること。
無力なわたしはあなたを救うことは到底できませんが、辛いときに寄り添うことくらいはできます…
だから辛くなったら必ず私に連絡してください。
そばにいますから……」

今まで、ずっと一人で耐えてきた。

16年間ずっと、負けないように生きてきた。

誰にも言えないし、誰にも頼れない…そう思ってきたのに、彼女は俺の事情を全て受け入れ寄り添ってくれる。

嬉しかった。

そして、俺は五歳のガキに戻ったように泣いた。

こいつの前でなら、俺は俺でいられる。

自分の居場所をやっと見つけた、そう思った。

そして、こいつだけは何があっても守りきる……そう決意したんだ。

例え離ればなれになったとしても、倫子だけは絶対に俺が守る。

まだ守れる力なんてまるでなかったのに…

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