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茜色の空に
第4章 真夏の向日葵
海渡が怒りのオーラをまといながら、私に近づいてくる。

私は思わず目を逸らした。

「何してたんだよ、お前。」

彼が、私の手を掴もうとしたので、反射的に恐怖でその手を振り払ってしまった。

「あ…ごめんなさい…」

そう言ったときには既に遅く、彼は一瞬ひどく傷ついた表情をした。

気まずくて、思わず顔を伏せて言う。

「ごめんなさい、話してた内容は言えません。私の問題なので…」

同級生の姉に父親が手を出していたなんて、言えるわけがない。

きっと彼は、私が宇佐美くんに口説かれていたと誤解してしまうだろう。

解っていても、やはり言えなかった。

「俺には関係ないってそういう事かよ……」

彼はそうつぶやき、私に背を向ける。

引き留めたい、行かないで欲しい。

そう思ったけれど、私は右手を握りしめながら涙をこらえるしかなかった。

傷つけたくないのに…

悲しませたくないのに……

失いたくないものは、自分の手のひらからいつもこぼれ落ちてしまう。

彼に背を向けて、静かに歩き出す。

頬を涙が一筋伝う。

部屋につくと、止まらなくなった。

きっと、もう二度と私にあの大好きな笑顔を向けてくれる日はないだろう。

声を殺して私は泣いた。
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