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茜色の空に
第5章 真夏の夜の悪夢
「兄ちゃん、迎えにきてくれてありがとう!」

縄をほどくと、月光がしがみついてきた。

やはり、縄の痕が手首に残ってしまった……

小学校で心配させないようにリストバンドしねぇと……

その刹那だった。

頭部に衝撃が走る。

痛みと衝撃で目の前が真っ暗になった。

そして視界が真っ赤に染まっていく。

誰かに思いっきり何かで殴られたのはわかった。

だが、意識がぼんやり薄れていく。

月光の呼ぶ声。

何人かの叫び声。

大勢の足音。

一体何があったのか……

「嫌だ!
僕ちゃんと言うこと聞くから、兄ちゃんとみんなを助けて!
お父さん!」

月光の叫ぶ声。

やっぱり時間かけすぎたか……なさけねぇ……俺、死ぬのかな……なんもみえねぇ……

倫子に戻るって約束したのに……

そして周囲の騒音が遠退いていく。

親方の笑う声、月光を俺を呼ぶ声、そして俺の名前を呼ぶ倫子の声……

「カイト……カイト……」

死ぬ間際って願望を叶えてくれんのかな。

倫子の声が聞こえる。

「海渡!!!」
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