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茜色の空に
第6章 秋風の狂詩曲
それから数ヶ月、私は脱け殻になった。

父親が心配して、しばらくは実家で過ごさせられた。

勉強しているときは現実を見なくてすむから、成績が恐ろしいほどあがった。

先生からは海渡が家庭の事情で、引っ越さざるを得ない状況だったと教えられた。

圭子も田辺くんも親身になってくれた。

でも世界は灰色のまま。

あなたがいないと、こんなに世界はモノクロの景色に見えるなんて。

あれから涙は出ない。

本当に脱け殻になってしまったみたい。

ただ町中で金髪の男性を見ると、彼ではないかと反応してしまう自分がいた。

でも私は彼を探すことはしなかった。

優しいひとだから、私を巻き込むわけにはいかないとわざと恨まれるようにして消えるようなひとだから。

そんな気持ちを無視はできなかったし、行動する気力も残っていない。

本当は会いたくてたまらなかった。

そして彼がいないことが夢なんじゃないかと思うこともあった。

けれど、夜があけるたびに現実だと思い知らされる。

そんな時だった。

校門の前で、あの人が待っていたのは。

もうクリスマス近い冬休みの直前。

「よぅ、お嬢ちゃん!」

陽気な無精髭のそのひとは、どことなく彼を思いおこさせた。
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