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令嬢は元暗殺者に恋をする
第10章 新たな出会い
 目覚めはあまりよいとはいえなかった。
 気怠さが全身に絡みつく。

 サラはひじを使って半身を起こす。途端、目眩と軽い吐き気が襲った。

 ゆっくりと部屋を見渡す。
 屋敷ではないことはすぐにわかった。
 それでもここは見慣れた部屋。
 大好きな場所。

 飾り気ひとつない、けれど、清潔で真っ白な壁と必要最低限の家財道具。
 かすかに漂う消毒液の匂い。

 安堵の吐息が唇からもれる。

 無事に、ベゼレート先生の所に運び込まれたのだ。
 緩やかな笑みを薄紅色の唇に浮かべ、視線を窓の方へと移す。

 出窓に飾られた白く可憐な花が心を和ませる。
 かすかな水滴に濡れる花弁、ぴんとたった茎。

 おそらく、テオが目覚めたサラのために買い求めたものであろう。
 テオのさり気ない心遣いに、サラは感謝の気持ちでいっぱいになる。

「気分はどう?」
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