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令嬢は元暗殺者に恋をする
第10章 新たな出会い
 そこへ、まるでサラの目覚めを予知したかの絶妙さで、テオが姿を現した。

 手には湯気がたつ深皿が乗った盆。
 中身はスープだった。
 テオはその盆をサラの前へ差し出した。

「あまり、食欲ないだろうけど、少しでも口にしたほうがいい。それから、今日一日はおとなしく寝ていること。これは約束だよ。いいね?」

 テオはサラの頭をいたわるようになでた。

「テオ……ごめんなさい」

「うん?」

「薬のこと……」

 テオは困った顔で苦笑した。

 ちょっとやそっとの発熱では、トランティア家の医師たちもあまり深刻にはならなかったであろう。

 高熱と胃の腑に刺激を与えることで嘔吐を引き起こさせ、苦痛を訴えるという症状を作りだして医師たちを混乱させる、という荒技であった。

 と、テオは語ってくれた。

「おかげで、僕は先生にひどく怒られたよ。責任として、サラの手伝いをすることだって」

 私の手伝い? と、サラは首を傾げた。

「あいつを探すんだろう? 僕も協力する」

「テオ……」

 心強いテオの言葉にようやく満面の笑みを浮かべ、サラは大きくうなずいた。

「ありがとう」
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