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令嬢は元暗殺者に恋をする
第10章 新たな出会い
「ベゼレート医師なら……」

 ひとりの医師がぽつりと呟いた。

 すると、側にいた他の医師たちもはっとする。

「そ、そうだ! 彼ならばサラ様を救うことができましょう」

 もはや、自分たちでは手の施しようがないと判断した彼らは、声をそろえてベゼレート医師の名を口にする。

 ミストスの精悍な顔に厳しいものが過ぎる。

 振り返り、控えている従者たちに視線を据え言い放つ。

「すぐに馬車の用意を!」

「か、かしこまりました!」

 それまで、ただ泣くばかりだったフェリアも、夫の言葉に我に返り、ふらつく足取りで衣装棚へと駆け寄った。

 必要最低限の替えの衣服などを持たせるためだ。

 やっと、先生の所へ行ける。

 そう思った瞬間、安心したのか、ようやくサラは意識を手放した。

 ハル……。

 夢の中で何度もその名を呼ぶ。

 ただひとりの少年の名を……。
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