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令嬢は元暗殺者に恋をする
第11章 裏街へ
高い塀に囲まれた裏街では外の喧噪さえも届かず、不気味な静寂と病んだ気配が辺りを支配する。
そんな禁断の領域に踏み込んだサラは、ただ呆然とするばかりであった。
なんて腐敗した所なのだろう。
これがアルガリタの町の一部なのか。
町も荒んでいるが、そこに住まう人々も同じくらい、いや、それ以上に荒んでいた。
路地脇では気怠そうに力無く座る者。
涎を垂らし、無意味に笑っている者。
苦痛を訴え、もがき苦しんでいる者。
さらに、古びた家屋の中からは、男と女の淫らな喘ぎ声が聞こえてくる。
そんな光景がそこかしこで見られた。
「怖じ気ついたか? まあ、無理もないな。あんたみたいなお嬢さんが、踏み込めるような場所じゃないからな」
シンの言葉に、サラはまなじりをつり上げる。
「本当に、ここにハルがいるのね」
「嘘は言わないさ。もっとも、あいつがまだここにいればの話だけどね」
両手を頭の後ろで組み、口許に薄い笑いを刻んでシンは言う。
本当なのか嘘なのか、どちらとも計りかねるシンの表情と口調に、サラはわずかなためらいをみせる。
もしかして、彼は自分を試しているのだろうか。
それほどまでに思う相手に会いたいのなら、あんたの勇気を示してみなと。
サラはきつく唇を引き結ぶ。
とにかく今は、たった一つの手がかりにすがるしかない。
シンというこの男を信じるしか。
それでも、胸に落ちる不安を完全に拭い去ることはできなかった。もしも、騙されていたら自分はどうなってしまうのか。
考えただけでも恐ろしい。
そんな禁断の領域に踏み込んだサラは、ただ呆然とするばかりであった。
なんて腐敗した所なのだろう。
これがアルガリタの町の一部なのか。
町も荒んでいるが、そこに住まう人々も同じくらい、いや、それ以上に荒んでいた。
路地脇では気怠そうに力無く座る者。
涎を垂らし、無意味に笑っている者。
苦痛を訴え、もがき苦しんでいる者。
さらに、古びた家屋の中からは、男と女の淫らな喘ぎ声が聞こえてくる。
そんな光景がそこかしこで見られた。
「怖じ気ついたか? まあ、無理もないな。あんたみたいなお嬢さんが、踏み込めるような場所じゃないからな」
シンの言葉に、サラはまなじりをつり上げる。
「本当に、ここにハルがいるのね」
「嘘は言わないさ。もっとも、あいつがまだここにいればの話だけどね」
両手を頭の後ろで組み、口許に薄い笑いを刻んでシンは言う。
本当なのか嘘なのか、どちらとも計りかねるシンの表情と口調に、サラはわずかなためらいをみせる。
もしかして、彼は自分を試しているのだろうか。
それほどまでに思う相手に会いたいのなら、あんたの勇気を示してみなと。
サラはきつく唇を引き結ぶ。
とにかく今は、たった一つの手がかりにすがるしかない。
シンというこの男を信じるしか。
それでも、胸に落ちる不安を完全に拭い去ることはできなかった。もしも、騙されていたら自分はどうなってしまうのか。
考えただけでも恐ろしい。

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