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令嬢は元暗殺者に恋をする
第12章 やっと再会できたのに
 サラの問いかけに一拍おいてさあ、とシンは首を振る。

 詳しいことは知らない。
 だが、想像がつかないわけではない。
 けれど、そのことを滅多に口にするべきではないと思った。

「ねえ、ハルは何者なの?」

「俺も、ここへ来る前のあいつの過去は知らない」

 そもそも海を隔てた遠い北の大陸の人間が、このアルガリタにいること自体が珍しいことだ。

「お友達なのに?」

 友達か……と呟き、シンはどこか遠い目で空を見上げた。

「あいつと出会ったのは一年ほど前だ。突然、この裏街にふらっとやって来て、居着くようになった。ここに流れてくるのはたいてい、わけありの人間だ。まともな者が来るようなところじゃない。あいつも、会ったばかりの頃はひどく思いつめ、何かに怯えているような、それでいて、回りの人間を苛立たせる空気を常に放っていた。裏街に来た新参者は目をつけられやすいし、あいつの容貌は特に目立つ。俺も最初はあいつが気に入らなくて、ここから追い出してやろうと喧嘩をしかけたが、ただの喧嘩のつもりが殺し合いになって、見事にやりかえされた。さっき、死にかけたって言ったのはこのこと」

「ばかねえ。ハルは強いもの、あなたなんかではかなわないわよ」

 サラの言葉にそうだな、とシンは苦笑する。
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