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令嬢は元暗殺者に恋をする
第2章 出会い
 サラは息を飲み立ちつくした。

 綺麗な瞳……。

 思わず心を奪われてしまうほどの美しい瞳であった。しかし、美しいのは瞳だけではない。

 透き通る白い肌に細面の顔貌。
 ひたいにかかる柔らかな黒髪は、陽光の加減によっては青みがかったようにも見えた。

 まとう雰囲気に色香を匂わせ、どこか儚げな雰囲気さえ感じさせる。

 そして、その容姿から察するに、彼は異国の者。
 おそらく北方大陸の出身か。

 綺麗な男の人……。

 ふと、サラは我に返った。

 私ったら……何、考えているの。
 そんなことよりも。

 少年に向かって恐る恐る歩み寄り、あとわずかで触れあえる位置へと近づく。

「ひどい怪我……すぐに手当をしないと」

 伸ばしかけたサラの手が虚空で止まる。

 触れようとした瞬間、少年の藍の瞳に峻烈な光が浮かび上がったからだ。

 先ほどまで瞳の奥で静かに揺れていた蒼い炎が、全てのものを巻き込み、容赦なく喰らいつくす激烈な炎へと変化しサラを射抜く。

 身にまとう雰囲気さえ一変し、放たれる気が回りの空気をも一瞬にして変えてしまった。
 これ以上、自分に近づく者はたとえ誰であろうと容赦しない、といわんばかりの鋭い気であった。

 たおやかな見かけとは裏腹に、この少年は危険だとサラは瞬時に悟る。

 さらにサラは背筋を凍りつかせた。
 剣の鞘を握る少年の手に、力が込められたことを見逃さなかった。

「ま、待って! 私は味方よ!」

 わかるでしょう? と両腕を大きく開いてまったくの丸腰であることを相手に示す。

 そんなことをせずとも、見ればわかるだろうが、それが彼女なりの精一杯であったのであろう。

 こ……言葉、通じているかしら……。

 切羽詰まった表情がサラの顔ににじむ。

 自分を信じて欲しい。
 どうすれば、それを相手に伝えることができるのか。
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