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令嬢は元暗殺者に恋をする
第2章 出会い
「あなたを助けたいの」

 意を決して足を踏み出し、少年を挑発しないよう、ゆっくりと近づき膝をついて座り込む。

「心配しないで。私はあなたの味方よ」

 ささやいて、片手を少年の白い頬へと伸ばす。相手は瞬きもせず、凄絶さを増した眼差しで見返してくる。

「こんなに傷ついて……」

 そっと、触れた少年の頬は冷たかった。

「もう、大丈夫だから……ね?」

 サラはにこりと微笑んだ。同時に、少年の藍色の瞳が戸惑いに揺れる。

 信じてくれたの?

 安堵の息をつこうしたその時。

「サラ様、離れて下さい!」

 背後で叫ぶ護衛たち三人が馬から飛び降り、いっせいに剣を抜いて切っ先を少年に突きつけた。

「待って! 彼、怪我してるの!」

 だが、男たちは耳をかそうとはしない。
 今にも斬りかからんばかりの勢いと気迫でじりじりとつめ寄ってくる。

「だめよ! この人重傷なの!」

「サ、サラ様……早くこちらへ」

「そいつは危険です」

 何を根拠にしてか、明らかに男たちは少年を危険人物だと決めつける。
 その時、少年の忍び笑いが背後から響きサラは驚いて肩越しに振り返った。

 数人の男たちに剣を向けられているにもかかわらず、少年は怯えるどころかその口許には不敵な笑みさえ刻んでいる。
 いや、それ以上に余裕すらうかがえる悠々たる態度はどういう意味か。
 それとも、単なる強がりか。
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