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令嬢は元暗殺者に恋をする
第14章 裏街の頭
 そんなテオの心情など知らず、シンはグラスの赤い液体に視線を凝らし。

「ところで、先生。この葡萄酒、年代物ですね。この芳醇な味と香り、微かな酸味……これはサレシア南部原産〝太陽の恩恵(めぐみ)〟」

 シンは葡萄酒を口に含み、あたりでしょう? と、得意げな笑みを口許に浮かべた。

「まさに、太陽の讃歌が聞こえるようですよ」

 テオは心の中でおもいっきり吹き出した。

 何が太陽の讃歌が聞こえるだ。
 顔に似合わないこと言って、恥ずかしくないのか?

 などと、辛辣な言葉を胸の中で吐き捨てる。

 一方、ベゼレートは目を瞠らせた。

「君! よくわかったね」

 テオはうんうん、とうなずいた。
 ですよね、先生。
 嗤ってやってくださいよ……。

「ええ!」

 テオは立ち上がって、シンと師を交互に見る。

「俺、けっこう詳しいんですよ」

「あなた、葡萄酒のことなんてわかるの?」

 まあね、と得意そうな表情をするシンに、サラはふーんと感心した様子でうなずいている。

 テオは顔をしかめたまま、く紅茶のカップを口に運んだ。
 ふと、何やら含むような眼差しでこちらを見つめているシンと目が合う。
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