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令嬢は元暗殺者に恋をする
第14章 裏街の頭
「お兄さんは、飲まないのですか?」

「僕はこれからまだ、やらなければいけないことがあるからね」

 だから早く帰れと言外ににじませる。

「この子はお酒が飲めないのですよ」

「へえ」

「飲むとすぐ寝てしまうの」

「子どもみたいですね」

 棘のある口調で言い、シンは目を細めて笑う。
 その態度にテオは眉根を寄せた。

 こ、こいつ、あきらかに今僕をばかにしたぞ。

 よもや、テオは知らない。
 テオに軽薄と言われたことをシンが少しばかり根に持っていることなど。

 ふん、こいつの酒に毒でも盛ってやろうか。

 と、考えテオははっと我に返る。

 僕は今、すごくとんでもないことを考えてしまったのでは。
 毒を盛ってやろうだって。
 ああ、何てことだ……。
 人の命を救うはずの、薬師であるこの僕が。
 と、とにかく少し落ち着こう。
 冷静になるんだ。

 と、紅茶のカップを再び口に運ぶ。
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