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令嬢は元暗殺者に恋をする
第15章 星夜の語り
「悲しい物語ね」

 サラは瞳を翳らせた。

「それにしても驚いたわ。あなた、お星様のことずいぶんと詳しいのね。もしかしてそうやって、女の子を口説いてるのかしら?」

 サラは目を細めてふふと、含み笑いを浮かべた。
 不意にシンの両手がサラの頬へ伸び、軽くつねるようにぐいっと引っ張っる。

「痛い、痛い……」

「まったく、この口はろくでもないことしか言わないな」

「ひどい……ひどい……意地悪!」

 サラはほんの少し赤くなった両頬を手で押さえて、シンを睨み上げる。

「もういいだろ? 今度こそ部屋に戻れ」

「そうだったわ!」

 サラは思い出した、というように、突然ぱんと手を叩いた。

「忙しいな、今度は何?」

「私、あなたに聞きたいことがあったの」

「だから何?」

「あのね、テオが朝食に干しぶとう入りのパンを焼くって言っていたの」

「……」

 一瞬の沈黙。

 シンの片方の頬がひくついた。
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