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令嬢は元暗殺者に恋をする
第16章 再びハルに会いに
「い、今すぐに向かいますか……?」
怖々と尋ねる男を、シンは肩越しに振り返る。
「いや、カイがいるなら問題はないだろう。それにエレナも一緒なら」
「か、頭……すみません。本当にすみません!」
「おまえが謝ることじゃねえだろ」
「で、でも……」
「わざわざ知らせに来てくれて、すまなかったな」
「そんな……あの、俺! もう一度裏街に、いや、カイさんの所に行って、あの娘のこと確認してみます」
いや、と言いかけたシンだが、思い直したように男を見る。
「だったら、カイに伝えてくれないか」
「はい!」
シンの目がすっと細められた。
「あいつが今日はここに戻りたくないと駄々をこねても、必ず連れてこい。必ずだと」
無理矢理、怒りを胸のうちに押しとどめるような、低い声音だった。
「わ、わかりました! 必ずカイさんに伝えます」
そして、男はばっと身をひるがえすと、駆け足でこの場から去って行ってしまった。
「サラに何かあったら僕は……僕は……」
テオは調理台に両手をつき、頭を垂れ何度も首を振る。
「大丈夫だ。心配はいらねえよ」
「しかし! それにそのカイという奴も裏街の……」
「そう、裏街の人間だが」
それが何だ? と、シンは目をすがめてテオを見返す。
テオはいや……と言葉を濁し、再びうなだれる。
「無事だと言うなら無事だったんだろ? そのうち、カイが連れて戻ってくる。それはそうと、おまえはまだ仕事があるんじゃないのか?」
「……」
シンはまぶたを落とす。
「悪い。この件については俺にも責任がある。少し頭を冷やしたい」
シンが厨房から出て行ったのを見届け、テオは腰が抜けたように椅子に座り込み頭を抱えた。
「お、俺たちも行こうぜ」
「そうだな……」
少年二人もそろりと窓から離れ後ずさる。
「ああ、頭の怒った顔、久々に見たよ。怖えよ……俺、ちょっと手が震えてる」
「なあ、あのお嬢ちゃん、ちょっとやばいかもだぜ」
「ああ……頭は女に甘いし、絶対に手をあげたりしないけど、今回ばかりは、あのお嬢ちゃん、どうなるかわからないかもよ」
「どうなるかわからないかもよって……どうなるんだ?」
「し、知るかよ……」
怖々と尋ねる男を、シンは肩越しに振り返る。
「いや、カイがいるなら問題はないだろう。それにエレナも一緒なら」
「か、頭……すみません。本当にすみません!」
「おまえが謝ることじゃねえだろ」
「で、でも……」
「わざわざ知らせに来てくれて、すまなかったな」
「そんな……あの、俺! もう一度裏街に、いや、カイさんの所に行って、あの娘のこと確認してみます」
いや、と言いかけたシンだが、思い直したように男を見る。
「だったら、カイに伝えてくれないか」
「はい!」
シンの目がすっと細められた。
「あいつが今日はここに戻りたくないと駄々をこねても、必ず連れてこい。必ずだと」
無理矢理、怒りを胸のうちに押しとどめるような、低い声音だった。
「わ、わかりました! 必ずカイさんに伝えます」
そして、男はばっと身をひるがえすと、駆け足でこの場から去って行ってしまった。
「サラに何かあったら僕は……僕は……」
テオは調理台に両手をつき、頭を垂れ何度も首を振る。
「大丈夫だ。心配はいらねえよ」
「しかし! それにそのカイという奴も裏街の……」
「そう、裏街の人間だが」
それが何だ? と、シンは目をすがめてテオを見返す。
テオはいや……と言葉を濁し、再びうなだれる。
「無事だと言うなら無事だったんだろ? そのうち、カイが連れて戻ってくる。それはそうと、おまえはまだ仕事があるんじゃないのか?」
「……」
シンはまぶたを落とす。
「悪い。この件については俺にも責任がある。少し頭を冷やしたい」
シンが厨房から出て行ったのを見届け、テオは腰が抜けたように椅子に座り込み頭を抱えた。
「お、俺たちも行こうぜ」
「そうだな……」
少年二人もそろりと窓から離れ後ずさる。
「ああ、頭の怒った顔、久々に見たよ。怖えよ……俺、ちょっと手が震えてる」
「なあ、あのお嬢ちゃん、ちょっとやばいかもだぜ」
「ああ……頭は女に甘いし、絶対に手をあげたりしないけど、今回ばかりは、あのお嬢ちゃん、どうなるかわからないかもよ」
「どうなるかわからないかもよって……どうなるんだ?」
「し、知るかよ……」

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