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令嬢は元暗殺者に恋をする
第17章 あなたの瞳に私をうつして
「い、痛っ……離せ……」

 苦痛混じりに離せと言う声も、どこか弱々しい。

「その前に、彼女の手を離すのが先だよ」

 ハルはサラを捕らえている男に視線を据える。

「さもないと」

 くつりと嗤って、ハルはつかんでいた男の腕をさらにぎりぎりと締め上げた。
 徐々に加わってくるその力に、男は顔を歪めて呻き声を上げる。

「この腕を折るよ」

「こ、こいつ……」

 先ほどまでの戯けた作り笑いがあとかたもなく消え、男たちの目に凄みが増した。その目は人を傷つけることを何とも思わない、残忍な目であった。

「いい度胸じゃねえか。俺らに逆らうとどうなるか」

 サラを押さえつけていた男はにやりと口許を歪めた。
 喉元にあてていた短剣を徐々に下げ、サラの服の胸元を一気に切り裂いた。

「いやっ!」

「うわーっ!」

 サラの悲鳴と、ハルに腕をねじられていた男の悲鳴が重なった。
 だらりと垂らした右腕を、もう片方の手で押さえ込みながら、男がその場に膝をついて崩れ落ちる。

「う、腕……腕がっ! 折れたよ。いてーよ……」

「こいつ、ほんとに腕折りやがった!」

「くそっ! この野郎!」

 ハルは男の手から落ちた短剣を拾うと、腕を押さえ地面でうずくまっているその男の髪をつかんで上向かせた。
 仰け反った男の頸筋に短剣の刃を押しあてる。

「ひっ!」

 薄い皮膚に鈍色の短剣の刃が食い込む。
 凶器を持つ手を横に引けば、たちどころに男に死が訪れるだろう。

「まずは、おまえからだね」

 ハルは男の耳元でささやいた。
 その声は人を殺すという行為に陶酔した、蕩けるような甘美な響きであった。

 じっと、男の目をのぞき込むハルの深く鮮やかな藍色の瞳の奥に揺れるのは、まぎれもない狂気。
 相手の魂ごと絡めとり支配する危険な色。

「な、何なんだよ……こいつ」

「薄気味わりい……」

 男たちは、自分たちがとんでもない者に刃向かっていったことにようやく気づいたのか、怯えた声をもらす。

「ま、待ってくれ……頼む。俺が悪かった。だから、命だけは……たす……たすけて」

「どうしようかな」

 冗談とも本気ともつかない口調で言い、怯える相手の様子を愉しむように、薄い笑いを口の端にのせる。
 男の顔が青ざめるのを通り越し、白くなっていた。
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