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令嬢は元暗殺者に恋をする
第18章 カイの秘密
「エレナ」
エレナのお喋りをカイは止める。
「そうだわ。ねえ、サラちゃん、私の家に来て。ここからそう遠くはないの。イゼル通りに住んでるわ」
イゼル通りならばここから歩いて数十分といったところだ。
「私がそのお洋服を直してあげる」
サラは裏街の男にからまれ、引き裂かれた服の胸元を押さえこんだ。
「エレナさんが? 直せるの?」
「ええ、私、町でお針子をしているの。だから、そういうのとても得意よ。ねえ、カイいいでしょう?」
カイは困ったように頭に手をあてたが、すぐにあきらめたようにため息をつく。
シンの右腕、そしてシンが率いる一派の中では実質二番目として、みなから恐れられ頼られている裏街の男でも、どうやら可愛い恋人のお願いには弱いようだ。
それにしても、とカイは腕を組み考え込む。
すっかりあいつの、ハルの思惑通りになったと。
エレナがこういう行動をとるとあいつは予想して、いや、わかっていてエレナをここへ呼ぶよう指示したのだ。
確かにエレナがいなければ、このままサラをあの診療所へと帰しただろう。
だが、命は無事だったとはいえ、裏街のごろつきに囲まれ、服を切り裂かれたとシンが知ればどうなったか……。
冗談じゃねえな。
それこそ、あいつの言う通り裏街がとんでもないことになる。
カイは苦い表情を浮かべ、サラをちらりと見る。
それに、この子もこっぴどくシンに怒られるところだったろう。
少しでもシンの怒りを緩和させるためにも、あいつはエレナを間に挟んできた。
それに……。
カイはちっと軽く舌打ちをしながら渋面顔を作る。
「カイさん、あの子どうします?」
「エレナさんはああ言ってますけど……」
仲間がカイの顔色をうかがうように尋ねてくる。
本来なら頭であるシンに従い、彼女をすぐに連れて帰らなければならないところだ。
が……。
「……エレナがそういうなら、仕方がない」
俺がエレナに甘い、エレナの頼み事を断れないってことを、あいつは知っているのか。
くそ! 弱みを握られているみてえで気分が悪い。
エレナのお喋りをカイは止める。
「そうだわ。ねえ、サラちゃん、私の家に来て。ここからそう遠くはないの。イゼル通りに住んでるわ」
イゼル通りならばここから歩いて数十分といったところだ。
「私がそのお洋服を直してあげる」
サラは裏街の男にからまれ、引き裂かれた服の胸元を押さえこんだ。
「エレナさんが? 直せるの?」
「ええ、私、町でお針子をしているの。だから、そういうのとても得意よ。ねえ、カイいいでしょう?」
カイは困ったように頭に手をあてたが、すぐにあきらめたようにため息をつく。
シンの右腕、そしてシンが率いる一派の中では実質二番目として、みなから恐れられ頼られている裏街の男でも、どうやら可愛い恋人のお願いには弱いようだ。
それにしても、とカイは腕を組み考え込む。
すっかりあいつの、ハルの思惑通りになったと。
エレナがこういう行動をとるとあいつは予想して、いや、わかっていてエレナをここへ呼ぶよう指示したのだ。
確かにエレナがいなければ、このままサラをあの診療所へと帰しただろう。
だが、命は無事だったとはいえ、裏街のごろつきに囲まれ、服を切り裂かれたとシンが知ればどうなったか……。
冗談じゃねえな。
それこそ、あいつの言う通り裏街がとんでもないことになる。
カイは苦い表情を浮かべ、サラをちらりと見る。
それに、この子もこっぴどくシンに怒られるところだったろう。
少しでもシンの怒りを緩和させるためにも、あいつはエレナを間に挟んできた。
それに……。
カイはちっと軽く舌打ちをしながら渋面顔を作る。
「カイさん、あの子どうします?」
「エレナさんはああ言ってますけど……」
仲間がカイの顔色をうかがうように尋ねてくる。
本来なら頭であるシンに従い、彼女をすぐに連れて帰らなければならないところだ。
が……。
「……エレナがそういうなら、仕方がない」
俺がエレナに甘い、エレナの頼み事を断れないってことを、あいつは知っているのか。
くそ! 弱みを握られているみてえで気分が悪い。

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