この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
令嬢は元暗殺者に恋をする
第2章 出会い
ひたすら少年の無事を願い続けるサラの目の前で、診察室の扉が開かれた。
中から四十代後半の男が姿を現した。
彼こそこの診療所の医師、ベゼレートその人であった。
咄嗟にサラは椅子から立ち上がり、今にも飛びつきかねない勢いで少年の様態を問う眼差しをベゼレートに向けた。
ベゼレートは彼女の気鬱を取り除く穏やかな笑みを口許に浮かべ、目尻に皺を刻んでゆっくりとうなずいてみせた。
何一つ語らずともそれだけで、じゅうぶんであった。
「よかっ……」
口許に両手をあて、サラは肩を小刻みに震わせた。
緊張と不安に張りつめていた心の糸が一気に解け、涙がこぼれ落ちる。
「しばらく安静ですが、心配はいらないですよ」
何より彼はまだ若く体力もある、とベゼレートはサラの細い肩に手を置き安心させるように言った。
よかった。
本当によかった。
少年に治療を施してくれたベゼレート医師に頭をさげ、サラは手の甲で涙を拭った。
ベゼレートは緩やかな笑みを浮かべたまま側の椅子に腰を降ろした。
少年のことで頭がいっぱいのサラは気づかなかったが、ベゼレートの顔はひどく憔悴しきっていた。
そこへ、ひとりの青年が憤激も甚だしく診察室から現れ、乱暴な仕草で扉を閉めた。
青年の名はテオ。
ベゼレートの養い子であり薬師である。
年の頃は二十歳くらい。
陽光にさらせば金髪にも見える、少し癖のある薄茶色の短めの髪に、瞳は澄んだ碧。
争い事や揉め事を好まぬという、穏やかな顔貌つきと雰囲気を持つ青年である。
そんな彼が怒りもあらわにするなど珍しく、サラは首を傾げた。
中から四十代後半の男が姿を現した。
彼こそこの診療所の医師、ベゼレートその人であった。
咄嗟にサラは椅子から立ち上がり、今にも飛びつきかねない勢いで少年の様態を問う眼差しをベゼレートに向けた。
ベゼレートは彼女の気鬱を取り除く穏やかな笑みを口許に浮かべ、目尻に皺を刻んでゆっくりとうなずいてみせた。
何一つ語らずともそれだけで、じゅうぶんであった。
「よかっ……」
口許に両手をあて、サラは肩を小刻みに震わせた。
緊張と不安に張りつめていた心の糸が一気に解け、涙がこぼれ落ちる。
「しばらく安静ですが、心配はいらないですよ」
何より彼はまだ若く体力もある、とベゼレートはサラの細い肩に手を置き安心させるように言った。
よかった。
本当によかった。
少年に治療を施してくれたベゼレート医師に頭をさげ、サラは手の甲で涙を拭った。
ベゼレートは緩やかな笑みを浮かべたまま側の椅子に腰を降ろした。
少年のことで頭がいっぱいのサラは気づかなかったが、ベゼレートの顔はひどく憔悴しきっていた。
そこへ、ひとりの青年が憤激も甚だしく診察室から現れ、乱暴な仕草で扉を閉めた。
青年の名はテオ。
ベゼレートの養い子であり薬師である。
年の頃は二十歳くらい。
陽光にさらせば金髪にも見える、少し癖のある薄茶色の短めの髪に、瞳は澄んだ碧。
争い事や揉め事を好まぬという、穏やかな顔貌つきと雰囲気を持つ青年である。
そんな彼が怒りもあらわにするなど珍しく、サラは首を傾げた。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


