この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
令嬢は元暗殺者に恋をする
第18章 カイの秘密
きっと、この人にとても深く愛されているんだわ。
いいな。
うらやましいな。
サラはエレナにぺこりと頭を下げ、次に目の前に座る人物にそろりと改めて視線を向ける。
相手はテーブルに頬杖をつき、椅子に浅く腰をかけ足を横に投げ出した格好でこちらを見ていた。
年の頃は十七、八歳。短めの髪は漆黒。ひたいに飾り紐を巻きつけ左耳の脇で結んで垂らしている。
顔立ちは勇ましいと言うにはあたらないが、それでもかなりの男前であった。
つり上がったまなじりの奥に宿る瞳。その瞳は雲一つない、晴れた青空を思わせるほどに澄んだ空色をしていた。
このカイという人も、綺麗な瞳だなとサラは思った。
ハルが夜空でシンが明け方、目の前のカイという人は青空といったところかなと、そんなことをぼんやりと考える。
この人もハルやシンみたいに過去にいろいろあって、だからこうして裏街に身をひそめているのかしら。
サラははっとして居住まいを正した。
そんなことよりも、まず言わなければいけないことがあった。
「あの……迷惑をかけてしまってごめんなさい」
「おまえが無事ならそれでいい。俺からは何も言うことはない」
何もない。
突き放すような相手の物言いに、サラはしょぼんとうなだれる。
あれだけ迷惑をかけてしまったのだ、きっと、もの凄く怒っているのだろう。
それとも、呆れて口もききたくないとか。
私嫌われてしまっているのだわ。
そこへ、エレナがカイをたしなめた。
「カイ、言い方が冷たいわ」
針を動かしていた手をいったん止め、エレナは眉宇をひそめ、咎めるようにカイを見る。
「いや、そんなつもりは……どのみち、家に帰ればシンに嫌というほど説教される。俺が今ここでとやかく言うことでも……」
それでも、無言でじっと見つめるエレナの視線に、カイは脱力したように肩の力を抜き、サラに向き直る。
「俺は怒ってもいないし、おまえを責めるつもりもない。それに、今回の件で裏街がどういうところか、身にしみてわかったはず」
うん、とうなずき、サラはそろりと顔を上げた。
いいな。
うらやましいな。
サラはエレナにぺこりと頭を下げ、次に目の前に座る人物にそろりと改めて視線を向ける。
相手はテーブルに頬杖をつき、椅子に浅く腰をかけ足を横に投げ出した格好でこちらを見ていた。
年の頃は十七、八歳。短めの髪は漆黒。ひたいに飾り紐を巻きつけ左耳の脇で結んで垂らしている。
顔立ちは勇ましいと言うにはあたらないが、それでもかなりの男前であった。
つり上がったまなじりの奥に宿る瞳。その瞳は雲一つない、晴れた青空を思わせるほどに澄んだ空色をしていた。
このカイという人も、綺麗な瞳だなとサラは思った。
ハルが夜空でシンが明け方、目の前のカイという人は青空といったところかなと、そんなことをぼんやりと考える。
この人もハルやシンみたいに過去にいろいろあって、だからこうして裏街に身をひそめているのかしら。
サラははっとして居住まいを正した。
そんなことよりも、まず言わなければいけないことがあった。
「あの……迷惑をかけてしまってごめんなさい」
「おまえが無事ならそれでいい。俺からは何も言うことはない」
何もない。
突き放すような相手の物言いに、サラはしょぼんとうなだれる。
あれだけ迷惑をかけてしまったのだ、きっと、もの凄く怒っているのだろう。
それとも、呆れて口もききたくないとか。
私嫌われてしまっているのだわ。
そこへ、エレナがカイをたしなめた。
「カイ、言い方が冷たいわ」
針を動かしていた手をいったん止め、エレナは眉宇をひそめ、咎めるようにカイを見る。
「いや、そんなつもりは……どのみち、家に帰ればシンに嫌というほど説教される。俺が今ここでとやかく言うことでも……」
それでも、無言でじっと見つめるエレナの視線に、カイは脱力したように肩の力を抜き、サラに向き直る。
「俺は怒ってもいないし、おまえを責めるつもりもない。それに、今回の件で裏街がどういうところか、身にしみてわかったはず」
うん、とうなずき、サラはそろりと顔を上げた。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


