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令嬢は元暗殺者に恋をする
第22章 夜会へ
大貴族トランティア家の夜会はそれは見事な華やかさであった。
招待客たちの馬車が続々と到着し、従者たちが馬車の扉を開け、主人を出迎える光景がそこかしこに見られた。
会場に踏み込むと、まるで別世界に誘われたよう。
床は艶やかに磨き上げられた大理石。
天井を見上げれば、豪華なシャンデリア。
飾られた水晶に無数の蠟燭が反射し、辺りを眩しいくらいに照らし出していた。
会場の入り口ではサラの父ミストスが笑顔で招待客を出迎え、その横ではフェリアが微笑みながら控えめに立っている。
「あれがサラの母さん? 美人だなあ」
シンは感嘆にも似た声を上げ、そして、首を傾げてちらりとサラを見る。
どうして、あんな美人で清楚な雰囲気を漂わせる女性から、こんな跳ねっ返りが生まれるのだろうかと。
「自慢のお母様よ。きれいでしょう?」
サラは自分の母親を褒められ、嬉しそうににこにこ笑っている。
二人は大階段を登った手すりに寄りかかり、途切れることなく現れる招待客を上から眺め見下ろしていた。
シンも肝が据わっているのか、意外にも堂々とした態度であった。
さすがに、会場に来る前までは怖じ気づき逃げ腰だったシンであったが、いざ華やかな場にでると思いの外慣れたような素振りで振る舞い、それなりに溶け込んでいる。
誰ひとりシンのことを不審に思う者はいなかった。
それどころか、彼は彼の知らぬ所ですでに女性たちの注目の的であった。
多くの貴婦人がサラの横に立つ少年に目を奪われていた。
「見てごらんなさいな。トランティア家のサラが男を連れているわよ」
「サラが? まあ、それもあんな若くていい男を……」
女たちは揃ってごくりと唾を飲み下す。
「わたくし、彼を誘ってみたいわ。後で声をかけてみようかしら」
「まあ、あなたときたら、いい男を見るとすぐに手を出したがるのだから」
「あら、そういうあなたもずいぶんと物欲しそうな目をしているのではなくて?」
「ねえ、誰が彼を落とせるか賭をしなくて?」
ふふふ、と艶めいた笑いが女たちの唇からこぼれた。
「今夜の夜会はとても愉しみだこと」
口許を隠した扇の下で、はしたなくも、そんな密やかな会話が彼女たちの間で交わされていようとはシンも知る由がなかった。
招待客たちの馬車が続々と到着し、従者たちが馬車の扉を開け、主人を出迎える光景がそこかしこに見られた。
会場に踏み込むと、まるで別世界に誘われたよう。
床は艶やかに磨き上げられた大理石。
天井を見上げれば、豪華なシャンデリア。
飾られた水晶に無数の蠟燭が反射し、辺りを眩しいくらいに照らし出していた。
会場の入り口ではサラの父ミストスが笑顔で招待客を出迎え、その横ではフェリアが微笑みながら控えめに立っている。
「あれがサラの母さん? 美人だなあ」
シンは感嘆にも似た声を上げ、そして、首を傾げてちらりとサラを見る。
どうして、あんな美人で清楚な雰囲気を漂わせる女性から、こんな跳ねっ返りが生まれるのだろうかと。
「自慢のお母様よ。きれいでしょう?」
サラは自分の母親を褒められ、嬉しそうににこにこ笑っている。
二人は大階段を登った手すりに寄りかかり、途切れることなく現れる招待客を上から眺め見下ろしていた。
シンも肝が据わっているのか、意外にも堂々とした態度であった。
さすがに、会場に来る前までは怖じ気づき逃げ腰だったシンであったが、いざ華やかな場にでると思いの外慣れたような素振りで振る舞い、それなりに溶け込んでいる。
誰ひとりシンのことを不審に思う者はいなかった。
それどころか、彼は彼の知らぬ所ですでに女性たちの注目の的であった。
多くの貴婦人がサラの横に立つ少年に目を奪われていた。
「見てごらんなさいな。トランティア家のサラが男を連れているわよ」
「サラが? まあ、それもあんな若くていい男を……」
女たちは揃ってごくりと唾を飲み下す。
「わたくし、彼を誘ってみたいわ。後で声をかけてみようかしら」
「まあ、あなたときたら、いい男を見るとすぐに手を出したがるのだから」
「あら、そういうあなたもずいぶんと物欲しそうな目をしているのではなくて?」
「ねえ、誰が彼を落とせるか賭をしなくて?」
ふふふ、と艶めいた笑いが女たちの唇からこぼれた。
「今夜の夜会はとても愉しみだこと」
口許を隠した扇の下で、はしたなくも、そんな密やかな会話が彼女たちの間で交わされていようとはシンも知る由がなかった。

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