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令嬢は元暗殺者に恋をする
第22章 夜会へ
つ、疲れた。
もう嫌だ。こりごりだ。
帰りたい……。
端整な顔に疲労感を滲ませて、シンは息をついた。
会場の外、バルコニーの手すりに頬杖をつき、ぼんやりと夜空を眺めるサラの姿をようやく見つけ安堵する。
「こんなところにいたのか? やっと見つけた。探したんだぞ。急にいなくなるから心配したじゃないか」
サラの横に並んだシンは、手すりに腕と背を預け、顔を上向かせて長いため息を吐きだした。
そんな仕草も様になるシンは、存在自体が華であるし、容貌も必要以上に人目を惹くというのもあってか、貴婦人たちの垂涎の的であった。
サラがシンの側を離れた途端、女たちは遠慮というものを捨て、シンの元へと詰めかけてきたのである。
代わる代わる、それこそ、途切れることなく躍りを申し込まれたり、耳元で何やら秘密めいた誘いまでも。
次から次へと物珍しげに群がってくる貴婦人たちを振り切り、適当な理由をつけて何とか逃げ出してきたのだ。
踊りに誘われても、俺踊れないし。
夜の相手にと誘われても、応じるつもりもない。
外の空気がひんやりとして心地よい。
バルコニーの手すりに頬杖をついたまま、サラがちらりと横目でこちらを見る。
「ずいぶんと楽しそうだったわね」
何やら棘の含んだ口調だった。
「冗談じゃない。脂粉ときつい香水の匂いで吐き気がしそうだ。胸がむかむかする」
「そう? たくさんの美女に囲まれてほんとは嬉しいくせに」
「俺が嬉しそうにしていたか?」
「していたわ」
即座に、それも素っ気なく切り返してくるサラを、シンは首を傾けて見下ろす。
「あれ? もしかして拗ねてるの?」
「拗ねてなんかないわ!」
やはり、頬杖をついたまま唇を尖らせ視線を遠くへと向けるサラの表情は、どう見ても面白くなさそうであった。
これのどこが拗ねてないといえるのか。
「顔にかいてあるよ。ひとりじゃつまらないって。どうして、側にいてくれないのって」
シンは人差し指で、ぷっと膨らんだサラの柔らかい頬を突つく。
途端、サラはきっとシンを睨み返した。
もう嫌だ。こりごりだ。
帰りたい……。
端整な顔に疲労感を滲ませて、シンは息をついた。
会場の外、バルコニーの手すりに頬杖をつき、ぼんやりと夜空を眺めるサラの姿をようやく見つけ安堵する。
「こんなところにいたのか? やっと見つけた。探したんだぞ。急にいなくなるから心配したじゃないか」
サラの横に並んだシンは、手すりに腕と背を預け、顔を上向かせて長いため息を吐きだした。
そんな仕草も様になるシンは、存在自体が華であるし、容貌も必要以上に人目を惹くというのもあってか、貴婦人たちの垂涎の的であった。
サラがシンの側を離れた途端、女たちは遠慮というものを捨て、シンの元へと詰めかけてきたのである。
代わる代わる、それこそ、途切れることなく躍りを申し込まれたり、耳元で何やら秘密めいた誘いまでも。
次から次へと物珍しげに群がってくる貴婦人たちを振り切り、適当な理由をつけて何とか逃げ出してきたのだ。
踊りに誘われても、俺踊れないし。
夜の相手にと誘われても、応じるつもりもない。
外の空気がひんやりとして心地よい。
バルコニーの手すりに頬杖をついたまま、サラがちらりと横目でこちらを見る。
「ずいぶんと楽しそうだったわね」
何やら棘の含んだ口調だった。
「冗談じゃない。脂粉ときつい香水の匂いで吐き気がしそうだ。胸がむかむかする」
「そう? たくさんの美女に囲まれてほんとは嬉しいくせに」
「俺が嬉しそうにしていたか?」
「していたわ」
即座に、それも素っ気なく切り返してくるサラを、シンは首を傾けて見下ろす。
「あれ? もしかして拗ねてるの?」
「拗ねてなんかないわ!」
やはり、頬杖をついたまま唇を尖らせ視線を遠くへと向けるサラの表情は、どう見ても面白くなさそうであった。
これのどこが拗ねてないといえるのか。
「顔にかいてあるよ。ひとりじゃつまらないって。どうして、側にいてくれないのって」
シンは人差し指で、ぷっと膨らんだサラの柔らかい頬を突つく。
途端、サラはきっとシンを睨み返した。

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