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令嬢は元暗殺者に恋をする
第22章 夜会へ
「別に、あなたのことなんかどうでもいいもの! 何よ、みんなにちやほやされて、だらしがなく鼻の下伸ばしちゃって」
「機嫌悪いな……」
それに、鼻の下など伸ばしていたつもりはないのだが……と、困ったようにシンは肩をすくめた。
「わかったよ、俺は退散するよ。また、後で様子を見に来てあげるから。それまでにご機嫌直してよ」
じゃあ、と手を上げサラの側を離れようとする。ところが、歩き出そうとしたシンの足が止まった。
「いたたっ……」
引っ張られる髪の痛みに顔を歪め、振り返ったシンは言葉を飲んだ。
自分の髪の毛の先端を握りしめたまま、サラが唇を引き結び、じっとこちらを凝視している。
シンはわずかにまぶたを落とした。
群がってくる女たちから、サラのことをいろいろと聞かされた。
それは、悪口と言っても過言ではなかった。
貴族の風習にあわない変わり者だから近寄らない方がいい。
男たちも彼女には近づかない。近づいたとしても、財産目あての不細工な男ばかりだとか。でも、その方が彼女にはあっているとか。
女性は大好きだが、陰でこそこそ悪辣なことを言う者など、どんなにみてくれが良くてもこちらの方からごめんだ。
だから、シンもお返しとばかりに、サラがどれだけ可愛くて優しくて、いい娘であるかを散々と語ってやった。
最後に驚く相手の顔に馬鹿と吐き捨てた。
もちろん、心の中でだが。
シンは瞳を揺らした。
見栄と虚飾にまみれた世界。
確かに、サラには向いていないのかも知れない。
華やかな場に溶け込むこともできず、年頃の娘なのに誰かの誘いを受けるわけでもない。
ましてや、友達とお喋りをするわけでも。
たったひとり、ぽつりと会場の外のバルコニーで空を見上げて……。
そんなサラの気持ちを考えると身につまされる。
「機嫌悪いな……」
それに、鼻の下など伸ばしていたつもりはないのだが……と、困ったようにシンは肩をすくめた。
「わかったよ、俺は退散するよ。また、後で様子を見に来てあげるから。それまでにご機嫌直してよ」
じゃあ、と手を上げサラの側を離れようとする。ところが、歩き出そうとしたシンの足が止まった。
「いたたっ……」
引っ張られる髪の痛みに顔を歪め、振り返ったシンは言葉を飲んだ。
自分の髪の毛の先端を握りしめたまま、サラが唇を引き結び、じっとこちらを凝視している。
シンはわずかにまぶたを落とした。
群がってくる女たちから、サラのことをいろいろと聞かされた。
それは、悪口と言っても過言ではなかった。
貴族の風習にあわない変わり者だから近寄らない方がいい。
男たちも彼女には近づかない。近づいたとしても、財産目あての不細工な男ばかりだとか。でも、その方が彼女にはあっているとか。
女性は大好きだが、陰でこそこそ悪辣なことを言う者など、どんなにみてくれが良くてもこちらの方からごめんだ。
だから、シンもお返しとばかりに、サラがどれだけ可愛くて優しくて、いい娘であるかを散々と語ってやった。
最後に驚く相手の顔に馬鹿と吐き捨てた。
もちろん、心の中でだが。
シンは瞳を揺らした。
見栄と虚飾にまみれた世界。
確かに、サラには向いていないのかも知れない。
華やかな場に溶け込むこともできず、年頃の娘なのに誰かの誘いを受けるわけでもない。
ましてや、友達とお喋りをするわけでも。
たったひとり、ぽつりと会場の外のバルコニーで空を見上げて……。
そんなサラの気持ちを考えると身につまされる。

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