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令嬢は元暗殺者に恋をする
第23章 抱きたい
 サラの肩にひたいを添えたまま、シンはせつない笑いを浮かべる。

「サラ」

「何?」

「愛してる」

 サラの肩にひたいを寄せていたシンが、濃い紫の瞳を揺らし、ゆっくりと顔を上げた。

「サラを抱かせて」

 抱きしめていたサラの身体が強ばったのが手に伝わってきた。

 真っ直ぐすぎるシンの思いにサラは戸惑いをみせる。が、いつもの冗談だと思ったのだろう、すぐに唇を尖らせ。

「もう! また……」

 突き飛ばそうとしてきたサラの右手をやんわりと捕らえ、シンは自分の指に絡ませた。

「ふざけてなどいない」

 絡ませた手を口許に持っていき、シンはそっとサラの指先に口づけを落とす。

「本気だよ。サラを愛したい」

 ようやく、シンが冗談などではなく、本気なのだということを察したサラは、かっと顔を真っ赤にして、視線をそらす。

「私、そういうのよくわからないからっ!」

 シンは口許に笑いを浮かべ、サラのあごに手を添えそらした視線を元に戻す。

「わからないだけ? つまり、俺に抱かれるのは嫌ではないと、そう、とらえていい?」

 サラはあっ、と声をもらした。

 今度こそ、逃がさない。

「私……」

「サラが嫌だと思うことも、怖がらせるようなこともしない。痛い思いもさせない。サラの表情や声や仕草でどうして欲しいか読みとるから。俺がどれだけサラを愛しているか伝えたい。優しくしたい」

 このまま有無を言わせずさらっていきたい。と、加速していく思いをぎりぎりのところでこらえる。

「どうしても無理だと思ったら、必ずやめると約束する」

「だって、私は……」

 口を開きかけたサラの唇に、その先は言わせないとシンは指先をあて言葉を遮る。
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