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令嬢は元暗殺者に恋をする
第24章 望まない婚約者
いや、別に驚くことなど何もないのだ。
サラほどの家柄の娘なら将来を約束した相手がいてもおかしくはない。
改めて身分の違いを知る。
「お祖母様が勝手に決めたのよ。でも私あの人、大嫌いなの」
「何かわかるような気がする」
一目見て、シンも先ほどの男にいい印象を抱くことはできなかった。
「本当? 何となく嫌いじゃなくて、とにかく嫌いなの」
「俺もこいつはいけ好かねえ奴だと思った」
「シンもそう思ったの?」
「見るからに嫌な雰囲気がにじみでてた」
二人は顔を見合わせくすりと笑った。が、不意にシンは何かの気配を咄嗟に感じたのか、鋭い視線を後方へと放った。
「サラ、探しましたよ。突然会場を抜け出すとはどういうつもりなのですか?」
低い声音が静かな夜を震わせた。
どこか尊大とも言える声とともに、薔薇の茂みから先ほどの男が姿を現した。
サラの意にそぐわぬ婚約者、ファルクである。
サラの唇から悲鳴にも似た声がもれる。
居丈高に腕を組み、ファルクは己の婚約者のかたわらにいるシンを下目遣いに見下ろし、明らかに侮蔑のこもった嘲笑をこぼす。
自分と比べるべくもない小者と判断したのであろう。
傲然たる態度を崩さず、今度は射るような眼差しをサラに放つ。
それは弱者を見下す強者のそれであった。
サラは唇を引き結び、座り込んだまま強くシンの腕をつかんだ。
「こちらへ来なさい。そんな得体の知れない男など、あなたには相応しくないですよ。あなたは由緒正しきトランティア家の跡継ぎなのですから」
ファルクは一歩足を踏み出す。
サラの身体がさらに、怯えるように震えだす。
目に涙さえ浮かべて。
サラほどの家柄の娘なら将来を約束した相手がいてもおかしくはない。
改めて身分の違いを知る。
「お祖母様が勝手に決めたのよ。でも私あの人、大嫌いなの」
「何かわかるような気がする」
一目見て、シンも先ほどの男にいい印象を抱くことはできなかった。
「本当? 何となく嫌いじゃなくて、とにかく嫌いなの」
「俺もこいつはいけ好かねえ奴だと思った」
「シンもそう思ったの?」
「見るからに嫌な雰囲気がにじみでてた」
二人は顔を見合わせくすりと笑った。が、不意にシンは何かの気配を咄嗟に感じたのか、鋭い視線を後方へと放った。
「サラ、探しましたよ。突然会場を抜け出すとはどういうつもりなのですか?」
低い声音が静かな夜を震わせた。
どこか尊大とも言える声とともに、薔薇の茂みから先ほどの男が姿を現した。
サラの意にそぐわぬ婚約者、ファルクである。
サラの唇から悲鳴にも似た声がもれる。
居丈高に腕を組み、ファルクは己の婚約者のかたわらにいるシンを下目遣いに見下ろし、明らかに侮蔑のこもった嘲笑をこぼす。
自分と比べるべくもない小者と判断したのであろう。
傲然たる態度を崩さず、今度は射るような眼差しをサラに放つ。
それは弱者を見下す強者のそれであった。
サラは唇を引き結び、座り込んだまま強くシンの腕をつかんだ。
「こちらへ来なさい。そんな得体の知れない男など、あなたには相応しくないですよ。あなたは由緒正しきトランティア家の跡継ぎなのですから」
ファルクは一歩足を踏み出す。
サラの身体がさらに、怯えるように震えだす。
目に涙さえ浮かべて。

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