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令嬢は元暗殺者に恋をする
第24章 望まない婚約者
「さあ、戻りますよ。戻って、私と一曲躍っていただかないことには私の、婚約者としての体面が潰れてしまう」
「いやよ」
シンの腕をつかんでいたサラの手が、さらにぎゅっと握りしめる。
「サラ、あまりわがままを言うようならば、少しお仕置きをしなければいけなくなりますよ」
ファルクは唇の端を持ち上げた。それは、将来を約束した婚約者に向ける笑みではなかった。
どこか残忍で、嗜虐的なそれである。
哀れなくらいサラは萎縮し怯えてしまっている。
それほどまでに、この男が怖いのか。
シンはまなじりを細めた。
それに、この男はお仕置きと言った。つまり、以前にもサラに何かをしたということ。
どういうことだ? とシンは震えるサラの手を強く握り返し目で問いかけた。
「私、ぶたれたの。その時は勉強のできない頭の悪い女は自分には相応しくないって。でも、顔はまずいからって、背中とか……」
その時のことを思い出したのか、サラは痙攣するように肩を震わせ、目に涙を浮かべる。
よほど、酷い目にあわされたらしい。しかし、ファルクは心外だとばかりに肩をすくめた。
「私ほどの男の花嫁になるからには、見た目はもちろんのこと、頭の方もせめて、まあ、最高とは言わないまでも人並み以上でなければ困るのですよ。恥をかくのは私なのだから」
「何よ、トランティアの家名だけが目あてのくせに!」
勇気を振り絞ったサラのなじる言葉に、ファルクは険しく眉根を寄せた。
今の言葉がお気に召さなかったらしい。
「私を怒らせるとどうなるか、一度じっくりとあなたに教え込まなければなりませんね」
シンはまなじりを細めてゆっくりと立ち上がる。
「その言葉をそっくりそのまま、てめえに返してやるよ」
そう吐き捨て、シンはサラを背中にかばい、濃い紫の瞳に怒りをにじませ相手を見据えた。
濃い紫の瞳に峻烈なまでの強い光が過ぎり、相手を容赦なく貫く。
ファルクは、ふっと可笑しそうに鼻で嘲笑った。
まるで、餓鬼が戯れ言をとでもいうように。
「それはどういう意味かな?」
「俺を怒らせて無事でいた奴はいないってことだよ」
ただし、ハルの奴は例外だが、と心の中でつけ加える。
背後ではサラが背中にすがりつき、やめてと小声で呟いていた。
「いやよ」
シンの腕をつかんでいたサラの手が、さらにぎゅっと握りしめる。
「サラ、あまりわがままを言うようならば、少しお仕置きをしなければいけなくなりますよ」
ファルクは唇の端を持ち上げた。それは、将来を約束した婚約者に向ける笑みではなかった。
どこか残忍で、嗜虐的なそれである。
哀れなくらいサラは萎縮し怯えてしまっている。
それほどまでに、この男が怖いのか。
シンはまなじりを細めた。
それに、この男はお仕置きと言った。つまり、以前にもサラに何かをしたということ。
どういうことだ? とシンは震えるサラの手を強く握り返し目で問いかけた。
「私、ぶたれたの。その時は勉強のできない頭の悪い女は自分には相応しくないって。でも、顔はまずいからって、背中とか……」
その時のことを思い出したのか、サラは痙攣するように肩を震わせ、目に涙を浮かべる。
よほど、酷い目にあわされたらしい。しかし、ファルクは心外だとばかりに肩をすくめた。
「私ほどの男の花嫁になるからには、見た目はもちろんのこと、頭の方もせめて、まあ、最高とは言わないまでも人並み以上でなければ困るのですよ。恥をかくのは私なのだから」
「何よ、トランティアの家名だけが目あてのくせに!」
勇気を振り絞ったサラのなじる言葉に、ファルクは険しく眉根を寄せた。
今の言葉がお気に召さなかったらしい。
「私を怒らせるとどうなるか、一度じっくりとあなたに教え込まなければなりませんね」
シンはまなじりを細めてゆっくりと立ち上がる。
「その言葉をそっくりそのまま、てめえに返してやるよ」
そう吐き捨て、シンはサラを背中にかばい、濃い紫の瞳に怒りをにじませ相手を見据えた。
濃い紫の瞳に峻烈なまでの強い光が過ぎり、相手を容赦なく貫く。
ファルクは、ふっと可笑しそうに鼻で嘲笑った。
まるで、餓鬼が戯れ言をとでもいうように。
「それはどういう意味かな?」
「俺を怒らせて無事でいた奴はいないってことだよ」
ただし、ハルの奴は例外だが、と心の中でつけ加える。
背後ではサラが背中にすがりつき、やめてと小声で呟いていた。

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