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令嬢は元暗殺者に恋をする
第25章 狂乱の円舞曲
 二人はじりじりと間合いをつめ、互いに最初の一撃の機会をうかがっていた。

 先に、動き出したのはファルクの方。
 見かけの逞しさと同じく、彼の操る剣技も剛健の気風。
 土を跳ね上がらせ、飛び込んでくる相手の一撃をシンはまずは刀身で受け止めた。

「シン!」

 サラは悲鳴を上げ、口許を手でおおった。

「どうしよう……私のせいだわ。きっとひどい怪我を負わされてしまう……」

 だが、サラは知らない。
 数日間行動をともにしたシンという男の実力を。強さを。

 振り下ろされた相手の一撃に、シンは片目を細めた。
 普通ならその鋭く重い攻撃に腕を痺れさせ剣を取り落としてしまうところであろう。

 あながち、剣の名手というのも嘘ではないらしい。
 だけど、このくらいで参ると思ったら大間違いだとシンは相手を剣で押し返す。

 刃を交えてはいったん互いに距離を取り、再び相手に斬りかかろうと躍り出る。
 シンの剣に迷いはなかった。

 蒼い月の光。
 星のささやき。
 匂い立つ薔薇。
 剣の輝き。
 向かい会う二人の男の影。

「嘘でしょう?」

 サラはぽつりと声をもらした。

「……ファルクとまともに剣を打ち交わせるなんて! すごいわ……シンは本当に強いのだわ!」

 ふと、サラの耳に遠くから円舞曲の楽曲が流れてきた。そして、食い入るように二人の闘いを見る。

 もう怖いことなんて何もない。
 何故なら、どちらが有利であるかサラの目にもはっきりと理解できたから。

 それまで、互角を見せてきた二人の闘いに明らかな変化が表れた。
 シンが攻めの体勢に移り変わったのである。

 遠くから聞こえてくる円舞曲の調べにあわせ、剣を前へと突きだし、右、左、右さらに、右、左、右。一撃、二撃、三撃と……。
 その攻撃はさながら、四分の三拍子を刻む軽やかな舞踏のようでもあった。もっとも、シンの耳に円舞曲が入ってきているかまでは定かではないが。
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