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令嬢は元暗殺者に恋をする
第25章 狂乱の円舞曲
 最後に鋭い一撃をファルク目がけて叩き込む。
 相手もその攻撃を刀身で受け止めた。
 互いに刃を噛み合わせる。

 シンは相手を剣で押し返し、すぐさま後方へ飛んだ。
 ファルクは肩を上下させ、荒い息を吐く。

「何、もう息切れ? あんたほんとに剣の名手?」

 たいしたことねえな、とシンは息ひとつ乱さず、余裕の態度で腰に手をあて相手を見据える。

「な、んだと……」

「言っておくけど、俺まだ実力の半分もだしてねえぞ。でも、あんたとこれ以上戦ってもつまらないし、もう終わりにするか」

 ファルクは眉をしかめた。
 剣を握る手が小刻みに震えている。

「小賢しいがきめ! どこまでも、ふざけた態度をとりやがって」

 気色ばみ、剣を振り上げファルクは突進した。その攻撃すら、難なくシンはかわしてしまう。

「ふざける? 俺、これでもけっこう腹立ててるんだぜ」

 シンは目を鋭くさせた。

「このまま、てめえをぶっ殺してやりてえとこだけど、そうもいかねえ。だから、あんたの自尊心をずたずたに切り裂いてやるよ」

 シンは相手の剣を一撃のもとに弾き飛ばした。
 さらに剣を横に一閃させ相手の頬を斬りつける。
 月華を弾き、虚空を回転してファルクの剣がどっと地面に突き刺さる。
 勝負ありと、刀身の切っ先をシンは相手の喉元に突きつけた。

 シンの背後で皓々と月が輝く。

「ぶざまだな」

 シンの冷ややかな一言に、ファルクは奥歯を噛み悔しそうな、あるいは恨めしげな顔でシンを凝視した。
 その左頬から一筋の赤い血がつっと、流れ落ちていく。
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