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令嬢は元暗殺者に恋をする
第27章 勝負の行方
「おいおい……兄ちゃん、もうやめたほうがいいって」

「顔色が悪いぞ」

「そもそも、シンにかなうわけないんだ」

「おい、そっちの兄ちゃんもいい加減にしてやったらどうだ? こいつ、ぶっ倒れるぞ」

「あんたらの飲んでる量、半端ないって」

「まだだよ」

 そう答え、シンはテーブルに頬杖をつきながら、空になったハルの盃に容赦なく酒を注ぐ。

「こいつが負けを認めたら、やめてやる」

 シンは自分の杯にも並々と酒をそそぎ一気に飲み干した。
 まだまだ余裕とばかりに笑ってみせながら、ハルにさあ、飲めと目で合図する。

「しかし、兄ちゃんもそうとう何ていうか、あれだな……」

「そ、俺って聞き分けのない子には容赦しねえから」

 テーブルの回りにはすでに大勢の客で人集りとなり、この成り行きを固唾を飲んで見守っていた。
 酒盃に手を伸ばすハルを見つめ、シンは肩をすくめ軽くため息をつく。

「ほんと、おまえも強情というか、そこまで負けず嫌いだとは思わなかったよ。どうみたってもう勝負はついてるだろ? あんまり意地張ると、どうなっても知らないぞ」

「黙れ!」

 テーブルをばしりと手で叩きつけ、ハルは勢いよく立ち上がった。途端、足をよろめかせ体勢を崩す。
 すかさず、シンが椅子から立ち上がり、倒れそうになったハルの身体に手を伸ばして支えた。
 ふらりと身体を傾げ、ハルのひたいがシンの肩に添えられた。
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