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令嬢は元暗殺者に恋をする
第27章 勝負の行方
「おい、大丈夫かよ」

 っていうか、俺にしがみついてきちゃって、ちょっと可愛い……。

「ハル?」

 シンの呼びかけにハルはゆっくりと顔を上げた。
 伏せたまぶたを縁取るまつげが、目元に影を落とす。
 ハルは閉じていた目をゆっくりと開いた。
 間近で見るその藍色の瞳に吸い込まれていく感覚に、シンは思わずうっ、と声をもらした。

「やべえ、そそられる……このまま、おまえを連れ帰っていいか? 実は俺、男でもわりと問題なかったりして」

 瞬間、ハルの藍色の瞳に苛烈な光が過ぎった。
 上目遣いにシンを見上げるハルのその口許に浮かぶのは嘲笑。

「かまわないぞ。ただし、そんなことをしてどうなるか、おまえ、わかっているんだろうな」

 慌ててハルから手を離したシンは、顔を引きつらせた。

「こ、こえ……冗談に決まってるだろ。冗談」

 いや、ちょっとだけ本気だったけど。
 それにしても、何が夜空のように澄んだきれいな瞳だよ。
 今の目は獲物を捕らえて容赦なく切り刻む獣の目だよ。

 シンの手を邪険に振り払い、ハルは店の外に向かって向かって歩き出す。

「どけ」

 回りにいた客たちがハルの威圧的な態度に怯え、道を譲るようにしてさっと退いた。

「約束は守ってもらうぞ。サラに会いに行け。いいな」

 ハルの背に言葉を投げかけるシンの表情に一瞬、切ない色が滲んだ。
 胸にちくりとした痛みが突き抜ける。
 サラへの思いは断ち切った。それでも込み上げてくるやり切れない思いにシンは顔を歪めつつも、その感情を無理矢理払いのける。
 多分、これで約束ははたせただろうと息をつき、もう一度椅子に座り直すと、すでに何杯目かわからない酒盃に手を伸ばす。

 俺も飲み過ぎたな。
 だけど、ちっとも酔えやしねえ。

 盃を口に持っていこうとしたシンの手がふと止まった。
 はっとなってもう一度店の外を見やる。

 あいつ、まさかと思うが、あの状態で今からサラのところに行ったりしないよな。
 大丈夫かな、サラ。
 何か、とんでもない獣の本性を目覚めさせて危険な状態のまま放ってしまったような気がしないでもないけど……。
 まあ、いっか。
 本気であいつを好きだと思うなら、これもまた試練だ。
 いや、でも……やっぱり大丈夫かな。

 そんなことを考えながら、シンは切ないため息をこぼすのであった。
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