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令嬢は元暗殺者に恋をする
第29章 それぞれの思い2 ※
「んんっ……!」

 もうだめ。
 舌も指もいや。
 シンのものを挿れて欲しい。

「きて。お願い……」

 泣きそうな声で早く欲しいとカナルは懇願する。

 カナルの秘部から唇を離すと、すでに蕩けきったそこも、欲しいと欲しいとひくつき、泣きながらねだっているようだった。
 カナルの蜜で濡れた唇を、シンは指の腹で拭いその指を口に含む。

「抱いて……お願いだから、もう……」

 カナルの声は切実であった。

 優しさなどいらない。
 気遣いの言葉もいらない。
 愛情なんてなくていい。
 シンの心が他の女に向いていてもかまわない。
 たとえ、虚しさに涙を流すことになっても、今、あなたに抱かれているのはあたし。
 今だけはあたしを愛してくれている。

 カナルの腰のあたりで膝立ちになったシンは、腕に引っかかっていただけのシャツを脱ぎ床に放った。
 月明かりに照らされた引き締まった肉体に、カナルはうっとりとした、ため息をこぼす。

 無駄な肉などひとつもない、細身だけれど、鍛えあげられた身体。
 しなやかな腰。
 この逞しい身体に今から抱いてもらえるのだと思うと、胸が高鳴り息もできないくらいであった。

 カナルはこくりと喉を鳴らす。
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