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令嬢は元暗殺者に恋をする
第29章 それぞれの思い2 ※
「カナル……?」

 ふと、名前を呼ばれたことに気づく。
 シンの唇が火照った背に口づけされる。
 ぴくりとカナルの肩が震えた。
 閉じていたカナルのまぶたが震えながら緩やかに開かれる。
 目尻に薄く光っていた涙の一粒がとうとうこぼれ落ち、頬へと伝う。
 シンはベッドに片手をつき、カナルの目尻に唇を寄せた。

「ごめん……つらかったよね」

 汗でひたいにはりついたカナルの前髪を指先で払い頬をなでる。しかし、カナルは違うと首を振り、頬に添えられたシンの手に自身の手を重ねた。

「違う……違うの。謝らないで。罪悪感ももたなくていいの。泣いてしまったのは、シンに何度も愛してもらえて嬉しかったから。ほんとうよ。それに、これはあたしが望んだことだから……あたし……」

 シンのことが好きだから。

 しかし、最後のカナルの思いは、言葉として声にはならなかった。
 瞳を揺らし、カナルが見つめてくる。

 何かを言いかけようと唇を薄く開き、けれど、あきらめたように口を閉ざして視線を落とすカナルの頬に、唇に、シンは優しく口づけをした。
 嬉しそうに微笑んでカナルはぽろぽろと涙をこぼす。

「シン……」

 カナルと身体を入れ替えシンはベッドに横たわる。
 力の抜けたカナルを引き寄せ抱きしめた。
 片腕をカナルの頭の下に差し入れると、寄り添ってきた相手の髪を優しくなでる。

「少し眠る?」

 カナルはいや、と小さく首を振りしがみついてきた。

「久しぶりにシンに会えたのに、今度いつ会えるかわからないもの。眠ってしまったらもったい……ない……」

 そう呟きながらも、しだいにカナルは静かな寝息をたて、深い眠りに落ちていった。
 こうしてカナルと身体を重ね合うことは初めてではない。

 それは互いに遊びと割り切って納得してのことだった。けれど、カナルの気持ちに気づかないシンではない。そして、カナルが自分の思いを口にした瞬間、この関係は終わるであろう。

 いや、終わりにしなければならない。



 何やってんだよ俺。

「ごめん、カナル……」

 やり切れない思いを払拭するために、カナルの思いを利用してしまった。
 カナルの気持ちに応えることはできないというのに。

 ごめん……。

 再び謝罪の言葉を落とし、シンは窓の向こう、白み始めた空へと視線をさまよわせた。
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