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令嬢は元暗殺者に恋をする
第32章 甘いひとときを過ごすはずだったのに
「ハルって、いちいち細かいことに文句をつけるのね」

「何か言ったか?」

 何でもないと、首を振るサラの腕をハルはつかんだ。

「な、何?」

「明日までにやらなければならないんだろう? さっさと片づけなよ。これ」

「そう簡単に言うけど。私にはもう手に負えないのよ……それに」

 勉強なんて嫌い、と悲痛な声を上げてサラは両手で頭を抱え込む。

「教えてやる」

 半泣き状態の顔でサラはそろりとハルを見上げた。

「教えてやるって……ハルが?」

「他に誰がいる」

「そうだけど。ハルはお勉強できるの?」

「だから教えるんだろう」

「ハルは頭がいいの?」

「あんたよりはね」

「どこでお勉強習ったの?」

 質問攻めのサラに、ハルはぴくりと眉を動かした。

「どこだっていいだろう。宿題が終わるまで、机の前から一歩たりとも動くな」

「いやよ……せっかくハルが会いに来てくれたのに、勉強しなければならないなんて」

「そう。なら、さっきの続きをするか?」

 ハルはにっと笑うと突然、サラの身体を軽々と抱き上げた。
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