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令嬢は元暗殺者に恋をする
第4章 私があなたを守ってあげる
 窓からもれ射し込む蒼い月光が、ハルの端整な顔を照らし出す。
 月の光は扉にたたずむ夜着姿のサラの姿をも映し出した。

 部屋に滑り込んだサラはすぐに後ろ手で扉を閉め、静かに錠をおろす。
 ハルは眉をしかめ、口許に含み笑いを作る。

「まさか夜這い? 可愛い顔をして、見かけによらないね」

 それには答えず、ベッドの脇にある椅子にサラは腰を下ろす。

 同時に、月明かりにことさら白く照らされたハルのしなやかな指先が、サラの頬へと伸びた。

「こんな夜更けに、男の部屋にひとりで忍び込むなんて、何があったとしても文句は言えないよ」

 触れるか触れないか程度にくすぐるその指先が、今度はサラの耳朶をなぞる。

「わかっているのか?」

 くすぐったさに、サラはびくりと肩をすぼめた。

「それとも、期待してここへ来た?」

 もしそうなら、応えてやってもいいよ、と吐息混じりに耳元でささやかれる。

「期待は裏切らないと思うよ。気持ちよくしてあげる」

「気持ちよく?」

「後悔はさせないってこと」

 慣れた指先に、滑らかで淀みなく流れる言葉。
 呟く甘い声は辺りを包む深い闇に溶けて、見つめ合う二人の間に長い沈黙が落ちる。
 淡い月華が部屋を仄かに満たし、窓の外、緩やかな風に弄ばれる木々が白い壁に揺れながら影を作る。

 わずかにまぶたを伏せたハルの瞳の奥にちらりと危険な光が揺れる。
 誘い出す甘い罠に捕らわれるか否かはサラ自身。しかし、サラは伸ばされた手を強引につかみ押し戻した。
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