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令嬢は元暗殺者に恋をする
第35章 遠い地、レザン・パリュー
「これでも夢?」

 ささやくハルの声が耳元に落ちる。そして、ハルの手が髪へと触れた。
 髪をなで指先に絡めその行為を何度も繰り返す。
 時々、髪をなでるハルの指が耳や首筋に触れ、サラは思わずくすぐったそうにぴくりと身体を震わせた。

 頬をほんのりと朱色に染め、サラはゆっくりと視線を上げる。
 相変わらずのハルの綺麗な顔立ちに見惚れてしまう。
 深い藍色の瞳は広がる夜空のように澄んでいて、その輝きは瞬く星たちにも劣らない。

 優しい瞳で私を見つめてくれる。

「夢じゃない」

 でも……ハルが私のことをどう思っているのか、私にはわからない。

「ねえハル……あのね、その、ハルは最近私以外の女の人と会ったりとかしている? 会って、その……」

「会って、何?」

 歯切れの悪い口調のサラに、ハルは意地悪く目をすがめて聞き返す。
 私の言いたいことわかっているくせに、そうやって意地悪言うのだから。少しは慣れたけど。

「会って、だから……」
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