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令嬢は元暗殺者に恋をする
第39章 近づいていく二人の距離
「ハルにそんなふうに言ってもらえるなんて、私幸せすぎて死んでしまいそうだわ」
「死なれるのは困るよ」
「ずっと、一緒にいてくれる?」
「手放さない、逃がさないって言っただろう。他の誰にもあんたを渡したりはしない。それに俺、狙った獲物は一度も逃がしたことがない」
「獲物……」
今、すごくどきっとしたけど、狙った獲物って、それって過去のお仕事の話みたい……。
複雑な顔で唇を引き結ぶサラに、ハルはくすりと笑みを浮かべた。
「レザンのことも、言葉も教えてあげる」
「ほんとうに教えてくれるの? でも、物覚え悪いってハルに呆れられるかも」
「誰が教えると思ってるの?」
「そうね。ハルは教え方がとても上手だものね」
嬉しそうに瞳を輝かせるサラを見つめ、ハルの顔にどこか悲痛さを忍ばせるものがにじんだ。けれど、無邪気に嬉しそうに顔を綻ばすサラには、ハルのかすかな表情の変化に気づくことはなかった。
「(この先、奴らに捕らえられレザンに連れ去られるという最悪な局面に陥った場合のことを考えて、言葉がわからない通じないではあまりにも酷だ。けれど、それは万が一のため。そんなことは絶対に俺がさせない)」
「ん? 何かしら」
レザンの言葉で呟くハルに、サラは何? と無邪気に首を傾げる。
「少しずつ、ゆっくりと覚えていこうねって」
「うん」
ハルはサラの耳元に唇を近づけ、ゆっくりとレザンの言葉をささやいた。
「言ってごらん」
「でも、意味がわからないわ」
「言えばわかるよ」
サラは頬を赤く染め、ハルが今呟いた言葉をたどたどしく繰り返した。
初めて口にした異国の言葉。
意味はわからずとも、美しい響きはまるで歌をうたうようで胸が踊った。
ハルの唇がゆっくりと唇に落ちていく。
それは、くすぐったいくらい羽が触れたような優しい口づけ。
大切にすると言ってくれたハルの、真実の思いが心に浸透していく。
たぶん意味がわかったわ。
わたしにキスをして──。
まるで二人の秘密の言葉みたい。
痛いくらい胸がどきどきする。
ハルの声が再び耳元に落ちた。
「好きだよ、サラ」
「ハル……」
背筋が震えた。
「死なれるのは困るよ」
「ずっと、一緒にいてくれる?」
「手放さない、逃がさないって言っただろう。他の誰にもあんたを渡したりはしない。それに俺、狙った獲物は一度も逃がしたことがない」
「獲物……」
今、すごくどきっとしたけど、狙った獲物って、それって過去のお仕事の話みたい……。
複雑な顔で唇を引き結ぶサラに、ハルはくすりと笑みを浮かべた。
「レザンのことも、言葉も教えてあげる」
「ほんとうに教えてくれるの? でも、物覚え悪いってハルに呆れられるかも」
「誰が教えると思ってるの?」
「そうね。ハルは教え方がとても上手だものね」
嬉しそうに瞳を輝かせるサラを見つめ、ハルの顔にどこか悲痛さを忍ばせるものがにじんだ。けれど、無邪気に嬉しそうに顔を綻ばすサラには、ハルのかすかな表情の変化に気づくことはなかった。
「(この先、奴らに捕らえられレザンに連れ去られるという最悪な局面に陥った場合のことを考えて、言葉がわからない通じないではあまりにも酷だ。けれど、それは万が一のため。そんなことは絶対に俺がさせない)」
「ん? 何かしら」
レザンの言葉で呟くハルに、サラは何? と無邪気に首を傾げる。
「少しずつ、ゆっくりと覚えていこうねって」
「うん」
ハルはサラの耳元に唇を近づけ、ゆっくりとレザンの言葉をささやいた。
「言ってごらん」
「でも、意味がわからないわ」
「言えばわかるよ」
サラは頬を赤く染め、ハルが今呟いた言葉をたどたどしく繰り返した。
初めて口にした異国の言葉。
意味はわからずとも、美しい響きはまるで歌をうたうようで胸が踊った。
ハルの唇がゆっくりと唇に落ちていく。
それは、くすぐったいくらい羽が触れたような優しい口づけ。
大切にすると言ってくれたハルの、真実の思いが心に浸透していく。
たぶん意味がわかったわ。
わたしにキスをして──。
まるで二人の秘密の言葉みたい。
痛いくらい胸がどきどきする。
ハルの声が再び耳元に落ちた。
「好きだよ、サラ」
「ハル……」
背筋が震えた。

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