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令嬢は元暗殺者に恋をする
第39章 近づいていく二人の距離
 震える手を口許にあて、サラはきゅっと目をつむる。

 泣いてしまうわ。

 それはレザンの言葉であったけれど、ずっと欲しかった言葉だと心の中で理解し、嬉しくて胸が張り裂けそうになった。
 かたく閉じた目の縁に涙の粒が浮かび上がる。
 その涙が頬にこぼれ落ちる前に、ハルの唇がそっと拭ってくれた。

 ハルが私に好きと言ってくれた。
 私、あきらめないでよかった。ずっと、ハルのことを追い続けてよかった。

 ハルがベゼレート先生の元から別れの言葉もなく去ってしまった時は、どれほど落ち込んだことか。
 もう会えないかもしれないと思った時のあの絶望した気持ちは今でも忘れない。
 それから、テオの協力で屋敷を抜け出すことに成功し、必死になってハルを探した。
 ここまでくるのに本当にいろいろなことがあった。そして、ようやくハルの心を手に入れることができた。

 誰よりもハルの側にいる。
 こんなにも、近くにいる。

 かすかに涙がにじむ目の縁、ハルの唇の感覚がいまだ熱をもったように残る。

 私、ハルのためにいつも笑うと決めたのに、もう、泣かないって誓ったのに少し泣いてしまったわ。でも、嬉しい涙だもの許されるわよね。

 赤くなった目を指先で拭い、サラはとびきりの笑顔をつくった。
 それはまるで、花開くことを待ち続けていた小さなつぼみが、涙の露をはじき、一気に美しく柔らかな花弁を広げたような、そんな可憐な笑顔であった。そして、花開かせたのは、愛おしい人がそそいでくれた愛情。

「私も、ハルが好き」

 はにかむように、けれど、相手の目を真っ直ぐに見つめてサラは自分の思いを伝える。
 何度その言葉を口にしても、まだ足りない、伝えきれないという焦れたもどかしさに胸がざわつく。

 ハルのしなやかな指先がサラの髪へと伸びた。

「レザンの言葉では?」

 ハルにぴたりと身体を寄せ顔を近づける。先ほどハルが口にした言葉を思い出しながら、その耳元にサラはささやくようにゆっくりと繰り返す。

「好きよ、ハル」

 ぱっとハルから身体を離したサラは、恥ずかしそうに視線を落とし頬を赤らめる。
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