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令嬢は元暗殺者に恋をする
第39章 近づいていく二人の距離
「ねえ私、上手に言えてる? 私の思いハルの心に響いている?」

 ふっと笑って、ハルの手が髪を梳いてくれた。
 愛おしげに何度も何度も。
 意識がハルの手の流れに集中する。髪をなでるその手の優しさに心地よさと安心感を覚え、サラはうっとりとまぶたを落とした。

 私世界一幸せ。
 どうか、この幸せが永遠に続きますように。
 いいえ、一生続くと信じている。

「ねえ、裏街での約束がもうひとつあるわ」

「そうだね」

「私をハルのお嫁さんにしてくれるって約束よ」

「ずっと一緒と言ったのは、そういう意味ではなかったの?」

 こともなげにそう答えるハルに、サラは驚きに目を見開いた。
 信じられない、と声を落とすサラのふわふわの髪を一房手にとり、ハルは口づけをした。

 ほんとうに、私がハルのお嫁さんに……。

「私、お料理とかお裁縫とかきちんと覚えなければだわ。お掃除のしかたとか、あとは、えっと……花壇にたくさん花を植えたいの。だから、お花の育て方も知りたい。それから……」

「覚えることがたくさんありすぎるね」

「何かひっかかる言い方ね」

 頬を膨らませ、サラはハルの胸をぺちりと叩く。
 くすりと笑うハルであったが、不意に真顔に戻り表情を暗く翳らせた。
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