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令嬢は元暗殺者に恋をする
第39章 近づいていく二人の距離
「俺たちは幼い頃から毒に耐性をつけるため、さまざまな毒をとり続けてきた。そのせいで……」

 身体に蓄積されてきた毒物が長い年月をかけ、やがて身体を蝕み死に至らしめる──。
 毒に侵され倒れていった組織の者たちを数え切れないほど見てきた。
 その最期はあまりにも壮絶だった……。
 自分にも、いつかその日がやってくるのだと、ハルは静かに語った。

「悪魔の花……?」

 ぽつりと呟くサラの声に、ハルは無言でうなずく。
 初めて出会った時、ハルの身体から甘い花の香りが漂い、その匂いを吸い込んだ途端、意識が遠のいて気を失ってしまった。
 それは何故と昨夜ハルに尋ねたら、さあね、の一言ではぐらかされてしまったが。

「あんたが言っていた甘い香りはその悪魔の花の香りだ。その花の花粉は人に幻惑を見せ。蜜は人の思考を鈍らせ。茎からでる汁は人の身体の自由を縛り。根は人の生命を奪い取る。それが悪魔の花と呼ばれる所以だ。けれど、子どもの頃から悪魔の花の毒を身体に少量づつ取り入れ耐性がついている俺たちにとっては、ちょっとした薬にもなる時もある。薬といってもあまりいい意味ではないが。あの時、カーナの森で……」

 ハルはその時のことを思い出すような表情を浮かべ、視線をわずかに落とした。
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