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令嬢は元暗殺者に恋をする
第39章 近づいていく二人の距離
「そうだったのね……あの時カーナの森で出会った時も、そしてその後、ベゼレート先生の診療所に行った後も、しばらく私のことを殺しかねないくらい殺気だったような気を放っていたのは、その薬のせいだったのね」

 ようやく、あの時のハルの状況を納得することができたわ。

「あのね、ハルが助けたあの男の子、大きくなったらハルみたいに強い男になるって言ってたわ。騎士になって、弱い人を守ったり困った人を助けたりするって。あの子にとって、ハルはきっと忘れられない命の恩人ね」

「そうか。あの子が無事で俺も安心した」

「うん、うさぎも無事よ」

 どこか照れたように、くすぐったそうにハルは笑った。

「少し話がずれてしまったね」

「ううん……話してくれて、ありがとう」

「俺はあまり長くは生きられない。あんたをひとり残して先にいってしまうことになる」

「長くはって、どのくらいなの……」

「個人にもよる。が、組織の中に年のいった者ほとんどいない。ごくまれに、何ごともなく生き延びている者もいるが、おそらく三十歳前後……中には早くて二十歳を過ぎて倒れてしまう者も」

「二十歳って……だって、ハルは今……」

 いくつ? と言いかけて、サラは言葉を飲み込んだ。

 見た目は十七、八歳くらいだろう。
 けれど、ハルは親の顔も知らない、自分の本当の名前も知らないと言っていた。
 それはつまり、自分の年齢も定かではないということではないかと今さらながらに気づく。そして、サラが懸念していた通り。

「さあ、俺は名前と同様、生まれた日も、はっきりとした年齢もわからないから。これまで数え切れないほどの人たちを殺してきた。そんな自分がまっとうに人生を終わらせることができるとは思っていない。どんな結末が自分に訪れようと覚悟はしている。大切な人を持つつもりもなかった。なのに……これからはもう俺ひとりではないのだと思うと、残していくあんたのことを考えると、それが……」

 そこで言葉を切り、ハルは小刻みに肩を震わせた。

 ずっと、いつ死ぬかもしれないと怯えながら、ひとりでその恐怖を胸に抱えてきたのね。
 不安だったでしょう?
 怖かったでしょう?
 だけど、もうひとりではないのよ。
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