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令嬢は元暗殺者に恋をする
第40章 しるし
「驚いたりしない?」

 何が? と言いかけて言葉を飲む。
 色香をたたえたハルの瞳に見つめられ胸がとくんとなった。

「たぶん……」

 そう答えたと同時にハルに抱き上げられる。
 小さな悲鳴をもらして咄嗟にサラはハルの首に腕を回してしがみつく。

 ハルが歩むその先がベッドだということに気づき、サラは身を固くしてハルの胸に顔をうずめた。
 ベッドまで連れていかれ、ころりと横たえられる。
 顔の脇に片手が置かれハルの顔が近づく。

「ハル……」

「だから、そんな怯えた顔をしないで、大切にしたいとさっき言っただろう。あんたが考えているようなことはしないよ」

 考えているようなこと、などと言われ耳まで赤くなった。

「手」

「手?」

「口許にあてて」

「こう?」

 どうして? と思ったものの、言われるまま素直にサラは両手を口許に持っていく。その瞬間、ハルの唇にゆるやかに妖しい笑みが浮かんだことに気づく。
 片脚にハルの手がかかり持ち上げられた。
 夜着の裾がするりと腰のあたりに滑り落ちる。
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